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金融検査マニュアル 別冊 中小企業融資編 (後編)



2011/4/1  菊 池 芳 平 

金融検査マニュアル 別冊 中小企業融資編 (前編)に続き、後編では貸出条件の変更と、金融機関との連携による経営改善について、別冊検証ポイントの考え方について検討してみましょう。

4.貸出条件及びその履行状況
銀行法(注)では3ヶ月以上の延滞債権と貸出条件緩和債権はリスク管理債権の開示項目とされているわけですが、別冊においても、貸出条件とその履行状況が重要な債務者区分の判断要素となっています。
(注)銀行法21条、銀行法施行規則19条の2@5号ロ

従って、条件変更が行われている場合は、検証ポイント上、その要因の確認がなされます。

これに対する債務者企業の対策としては、事業詳細調査や経営改善計画の策定等の過程から、円滑にして健全な債務弁済の方向性を見いだすことですが、別冊においても貸出条件緩和債権の卒業基準や経営改善計画の特例が認められていますので、私たちはこれらの特例についても注視する必要があります。

5.貸出条件緩和債権
別冊の検証ポイントでは以下の点が指摘されていますが、貸出条件緩和債権は他の項目に比較して検証ポイントのなかでも最重要項目なっていることから特に注意が必要です。

  1. 貸出条件緩和債権に該当しない場合
    1. 不動産担保や信用協会保証等の担保・保証等により100%保全されている場合は調達コスト(資金調達コスト+経費コスト)を下回る場合を除いて、貸出条件緩和債権該当しないものとされます。
    2. また、貸出条件緩和債権の検証にあたって留意される信用リスクの評価では
      • 代表者等個人の意思と個人資産返済能力が加味されます
      • 企業保有資産の売却等と財源確保の見通しと確実性が勘案されます
  2. 貸出条件緩和債権の卒業基準
    1. 中小企業の特殊事情により経営改善計画等が策定されていない場合でも金融機関の作成分析資料が勘案されます。
    2. 貸付条件の変更がされている場合でも、実現可能性の高い抜本的な経営再建計画が策定されている場合は、貸出条件緩和債権に該当しないものとされます。
    3. 計画がが1年以上順調に進捗している場合は実現可能性の高い計画と判断できるとされます。
    4. 貸出条件変更日から1年以内に経営再建計画を策定する見込みがある次の場合に該当する場合は貸出条件緩和債権該当しないものとされます。
      • 金融機関と合意に至っていないが経営再建の資源が存在し、かつ
      • 債務者に経営再建計画を策定する意思があること
    5. 自己査定別表1でいう合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画を実現可能性の高い抜本的な経営再建計画とみなしても差し支えないものとされています。

6.企業・事業再生の取組みと要管理先に対する引当
債務者企業が金融機関における信用格付けのランクアップを図るには、積極的に企業・事業再生の取組を実施することも対処法の一つです。
別冊においても以下の条件のもとに金融機関の引当率の低減を認めていますので、当該金融機関と積極的にリレーションシップを図って企業・事業再生に取組むべきでしょう。

  1. 金融機関が再生支援のための経営相談等の再生計画の策定を実施しており、実績データで確認できること。
  2. 債務者選定基準が明確であること。
  3. 引当率の算定にあたって、十分な母集団の確保、最低1年間ののデータの蓄積があること。


7.資本的劣後ローンの取扱い

早期経営改善特例型の資本的劣後ローン
は、別冊によると

  1. 要注意債権で金融機関との双方合意の上締結され
  2. 返済条件として、他の貸出債権が完済された後に償還が開始され
  3. デフォルトが生じても請求権の効力が他債権の弁済後に生じ
  4. 債務者が金融機関に財務の開示を約し
  5. 金融機関による一定の関与と、約定違反の場合は期限の利益を喪失する

等の条件が付された貸出金のことをいいます。
この条件を満たすと債務ではなく資本とみなすことになることから債務超過の改善が期待できます。

資本的劣後ローンはこの他に、十分な資本的性質が認められる准資本型(債務者区分を問わず、償還期間が長期であることや金利が業績連動型であること等資本に近い性質を持っている) がありますが、この場合は上記の条件をみたさなくても資本とみなすことになっています。

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