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債務超過企業の経営改善計画


- 金融検査マニュアル自己査定別表1 - 



2010/12/1  菊 池 芳 平
(2017/11/6一部追加)


はじめに
 金融庁は金融機関の監督・検査の体制を大幅に見直し、2018年夏頃にも検査局を廃止し、業務を監督局に統合し、組織再編に併せて、画一的な項目の多い「金融検査マニュアル」も廃止すると発表しました。不良債権処理と破綻処理を優先した検査方法は、企業への貸し渋りを誘発したとも言われていますが、今回の大幅見直しは人口減少や超低金利、フィンテックの登場など金融機関の環境の激変も背景にあるようです。 改革の趣旨は従来の検査マニュアルに沿った保守的融資から、融資する際に企業の将来性とビジネスモデルを重視し、成長分野へ新規融資を促し、赤字でも成長力のあるベンチャー企業や債務超過でも有力企業などがお金を借りやすくするようにして、融資先が健全かどうかの判断を金融機関に委ねようとするもののようです。
そこで今回は過去に掲載した、金融検査マニュアルとはどんなものか、債務超過企業の例でみてみましょう。

 金融検査マニュアル自己査定別表1 (以下金融検査マニュアルといいます。)では、破綻懸念先(注1)である債務超過企業(資産合計額より借金などの債務合計額が多い企業)経営改善計画等が一定の条件を充たすと、セーフハーバールールにより信用格付
(債務者区分)を上げることを認めています。
今回は、債務超過企業(債務者)について、金融検査マニュアルをもとに対処法のコツを探ってみます。

(注1)
破綻懸念先とは、金融検査マニュアルによると、実質債務超過に陥っており、貸出金が延滞状態にあるなど元本と利息の回収に重大な懸念があり、今後経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者をいいます。(自己査定別表1-1-(3)-B)


Q 
(実質債務超過の場合の対処法)
当社は業況が著しく低調の状態にあり、財務状況も実質債務超過の状態に陥っております。
元本と利息の支払も延滞状態ですが、このような状況のなかで金融機関の利用にあたり当社はどうのように対応すべきでしょうか?

A
(破綻状態から抜け出す経営改善計画)
あなたの会社は、原則として破綻懸念先の債務者区分になると思われます。
しかし、金融検査マニュアルによるとあなたの会社が金融機関等の支援を前提として、一定のルールのもとに経営改善計画等が策定されている場合は、その計画が
合理的で実現可能性が高い場合(合実計画)は、要注意先と判断しても差し支えないものとされています。

このルールとはその経営改善計画等の内容が以下の全ての要件をみたしていることです。

イ 経営改善計画等の期間が5年以内(注2)で、かつ実現可能性が高いこと
ロ 計画終了後に債務者区分が正常先(注3)となること。
ハ 取引金融機関(原則として全て)の合意が確認できること。
ニ 金融機関の支援が資金提供(債権放棄、現金贈与等)を伴うものでないこと。
(注2)
その計画期間が5年超10年以内の場合でも、売上高等と当期利益が事業計画に比較して概ね8割以上確保されている場合は、これを認める(イに含まれる)ことになっています。

(注3)
計画終了後のその債務者の債務者区分が要注意先となる場合であっても、金融機関の再建支援を必要とせず自助努力によって事業継続が確保される状態となる場合は、これを認める(ロに含まれる)ことになっています。

この他、金融検査マニュアルでは次のようなことが指摘がされています。
  • この基準は目安であり、債務者区分の検討に当たっては機械的・画一的に適用してはならない。
  • 債務者区分は、形式的に判断してはならず業種の特性、事業の継続性と収益性の見通し、キャッシュ・フローによる債務償還能力、経営改善計画の妥当性、金融機関等の支援状況等を総合的に勘案して行うものとする。
  • 特に、中小・零細企業は経営改善計画が策定されていない場合もあるのでそのことをもって直ちに破綻懸念先と判断してはならず、その企業の財務状況のみならず、技術力、販売力、成長性、代表者等の役員報酬の支払い状況、代表者等の収入状況や資産内容、保証状況、保証能力等を総合的に勘案して行うものとする。

次回の1月はリスケジュールと経営再建について掲載します。)



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