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リスケジュールと経営再建

−中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針−


2011/1/1  菊 池 芳 平 

経営をとりまく厳しい環境や金融円滑化法の施行及び金融円滑化法の期限の延長等により、借入金の返済条件の変更が多くなっています。

そこで今回は、企業が借入金の返済条件の変更をした場合の対処法を、中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針(以下監督指針といいます)を参考に検討します。

借入金の元本返済猶予等の返済条件の変更は一般にリスケジュールと言われるのですが、このリスケジュールによる債権は通常、銀行法施行規則第19条の2第1項第5号ロに規定する貸出条件緩和債権(注)に該当し、金融機関では要管理債権として要注意先の中でも要管理先に分類されています。

(注)監督指針によると貸出条件緩和債権とは、 
   a.金利減免債権 
   b.金利支払猶予債権
   c.経営支援先に対する債権 
   d.元本返済猶予債権 
   e.一部債権放棄を実施した債権
   f.代物弁済を受けた債権 
   g.債務者の株式を受け入れた債権 
等の約定条件の改定を行った債権又はその組み合わせで、かつ債務者に対する取引の総合的な採算を勘案して、その貸出金に対して、基準金利 (その債務者と同等な信用リスクを有している債務者に対して通常適用される新規貸出実行金利) が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されていない債権とされています。


この要管理先の貸倒引当率は20%を大きく上回ることから、要管理先の判定は金融機関における自己資本比率の算定上重要なポイントになりますが、同時に債務者企業の金融取引においても重大な懸念材料となります。

リスケジュールによる債権が金融機関の要注意の要管理とされる貸出条件緩和債権に判定されるとしても、例外がいくつかあります。

その一つが実抜計画です。
これは監督指針によると、実現可能性の高い(注1)抜本的な(注2)経営再建計画、即ち 「実抜計画」に沿った金融支援の実施により経営再建が開始されている場合は、当該貸出金は貸出条件緩和債権に該当しないものと判断されることから金融機関と債務者にとって有利に作用します。

この実抜計画の方針は監督指針に以下のとおり注記として示されています。

(注1) 「実現可能性の高い」とは、以下の要件を全て満たす計画であること。 
(一)計画の実現に必要な関係者との同意が得られていること。 
(ニ)計画における債権放棄などの支援の額が確定しており、当該計画を超える追加的支援が必要と見込まれる状況でないこと。 
(三)計画における売上高、費用及び利益の予測等の想定が十分に厳しいものとなっていること。


※コメント 特に(三)は重要で、一般に企業経営者は楽観的な計画を立てられることが多いので、監督指針ではこの点十分な現実的計画の必要性を指摘しています。
具体的には売上については事業の継続性と収益性の見通し、利益についてはいわゆるキャッシュフローによる債務償還能力を重視していることから、再建計画の策定にあたっては特に注意が必要です。

(注2) 「抜本的な」とは、概ね3年 (この3年の期間については債務者企業の規模又は事業の特質を考慮した合理的な期間の延長を排除しないこととされています。) 後の当該債務者の債務者区分が正常先となることをいいます。 
なお、債務者が中小企業である場合の取扱いは、金融検査マニュアル別冊「中小企業融資編」を参照するとされています。

※コメント 「抜本的な」の要件は、貸出条件緩和債権関係Q&A問28と金融検査マニュアル別冊中小企業編において、一定の要件のもとに期間の延長等を認めています。
それによると中小企業に限り、概ね5年以内 (ただし、その計画期間が5年超10年以内の場合でも、売上高等と当期利益が事業計画に比較して概ね8割以上確保されている等、概ね計画どおり進捗している場合はこれを認めることになっています。) に、正常先 (ただし、計画終了後のその債務者の債務者区分が要注意先となる場合であっても、金融機関の再建支援を必要とせず自助努力によって事業継続が確保される状態となる場合は、これを認めることになっています。) となる経営改善計画の策定により、ランクアップを認めています。


従ってこのような経営再建計画をたてて金融機関にアピールすることは、債務者企業にとって経営改善と同様に最重要事項になると考えられます。

次回の2月は貸出条件緩和債権の改善と注意点を掲載します。)




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