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金融検査マニュアル 別冊 中小企業融資編 (前編)



2011/3/1  菊 池 芳 平 


金融機関の債務者区分ごとの対処法は前月以前に検討したところですが、今回は金融検査マニュアル別冊「中小企業融資編」(以下別冊といいます)を中心にそのポイントについて検討してみましょう。

1.代表者等との一体性
別冊によると、企業と代表者等とが実質一体となっている場合が多い中小企業の債務者区分の判断では、以下のように諸般の事情が考慮されます。
そこでその事情を金融機関によく説明し、債務者区分の判断を出来るだけ有利に持って行くことがポイントとなります。

  1. 代表者等からの借入金等は返済を要求しない場合は、原則として自己資本相当額に加味出来ます。
  2. 代表者等への貸付金や未収金等は、回収可能性を検討し自己資本相当額から減額します。
  3. 赤字企業でも、代表者等への役員報酬や家賃支払が赤字原因の場合は、赤字原因や返済状況、返済原資の状況を確認することとされています。
  4. 代表者等の個人収支や資金繰り、関係企業の収支や資金繰りが確認されます。
  5. 代表者等の預金や有価証券、不動産等の資産を返済能力として加味できます。

2.企業の技術力、販売力、経営者の資質やこれらを踏まえた成長性
金融機関の評価の重点は、自己資本比率や償却前利益その他の定量分析にあるといえます。
しかし、別冊の検証ポイントでは以下の事項が、定性分析において企業の成長性や発展性の勘案上、重要な要素として留意する必要があるとしています。この点は債務者企業のアピールポイントと言えます。

  1. 技術力・販売力
    • 特許権、商標権、著作権等の知的財産権の存在
    • 新商品等の具体的販売状況を基にした今後の事業計画の存在
    • 業界内の評判を示す資料の存在
    • 市場規模やマーケットシェアの動向
    • 仕入れ業者や顧客の評価や状況、諸条件の優位性の確認
  2. 経営者の資質
    • 経営改善への取組姿勢
    • 財務諸表向上への取組状況
    • 債務返済履歴
    • 人材育成への取組状況
    • 後継者の存在等
3.経営改善計画
中小企業の実情からすると、経営改善計画の策定は困難なことが多いので、別冊では金融機関が作成・分析した資料によって債務者区分の判断を行うことも許容されています。

また、金融検査マニュアルでは、破綻懸念先の正確性の検証では、中小企業については、経営改善計画等が策定されていないことをもって債務者を直ちに破綻懸念先と判断してはならないとされています。(金融検査マニュアル自己査定別表1の1.債権の分類方法(3)B破綻懸念先の自己査定結果の正確性の検証)

仮に経営改善計画が作成されているとしても、必ずしもその内容が精緻といえない場合もあります。
そこで別冊検証ポイントでは、経営改善計画等の進捗状況が計画未達成(売上高等や当期利益が計画比、概ね8割未満)でも機械的・画一的に判断しないこととなっています。

従って計画未達成でも、金融機関はその要因や経営改善の見通しをよく検討することとされているのですが、特にキャッシュフローの見通しを重視するものとされています。
債務者企業はこの点に注意して金融機関に説明する必要があるといえます。


金融検査マニュアル 別冊 中小企業融資編 (後編)につづく  



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