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会社の税金-分割①


2015/2/1  菊 池 芳 平

はじめに
 会社分割は企業経営の合理化、効率化、競争力強化のために採用される事業再構築の手法といえます。
 特に事業再生では経済合理性の観点や債務整理に関連して、ある事業部門を分離独立させる方法として活用されています。
 法人税法では分割を適格分割と非適格分割に分けて課税関係を規定しています。
 適格分割型分割は、分割により移転した資産負債について帳簿価額による引継ぎをしたものとし、適格分社型分割では移転をした資産負債について帳簿価額による譲渡をしたものとして課税が繰延べられます。
 一方、非適格分割ではその移転した資産負債は時価による譲渡をしたものとしてその譲渡損益を益金の額又は損金の額に算入することとしています。(法62①、62の2②➂、62の3①)
 分割型分割とは次に掲げる分割をいいます。(法2①十二の九)
イ 分割の日において当該分割に係る分割対価資産の全てが分割法人の株主等に交付される場合の分割
ロ 分割対価資産が交付されない分割で、その分割の直前において、分割承継法人が分割法人の発行済株式等の全部を保有している場合又は分割法人が分割承継法人の株式を保有していない場合の分割

 分社型分割とは次に掲げる分割をいいます。(法2①十二の十)
イ 分割の日においてその交付される分割対価資産が分割法人の株主等に交付されない場合の分割
ロ 分割対価資産が交付されない分割で、その分割の直前において分割法人が分割承継法人の株式を保有している場合(分割承継法人が分割法人の発行済株式等の全部を保有している場合を除きます。)の分割

適格分割の要件
 適格分割とは、次のイ、ロ、ハのいずれかに該当する分割で分割対価資産として分割承継法人の株式又は分割承継親法人株式のいずれか一方の株式以外の資産が交付されないものをいいます。(法2①十二の十一)
イ 完全支配関係が継続する分割(注1)
ロ 支配関係が継続しかつ、次の全ての要件に該当するもの(注2)
   ①主要な資産、負債の移転
   ②おおむね80%以上の従業者が分割後も業務に従事
   ③分割事業が分割後も継続営業
ハ 共同で事業を営むための分割(注3)

  ※ 分割承継親法人株式とは、分割の直前に当該分割に係る分割承継法人と当該分割承継法人以外の法人との間に当該法人による直接完全支配関係(法人のいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式等の全部を保有する関係をいいます。)があり、かつ、当該分割後に当該分割承継法人と当該法人(親法人)との間に当該親法人による直接完全支配関係が継続することが見込まれている場合のその親法人の株式又は出資をいいます。(法令4の3⑤)

 ※ 適格分割はイ、完全支配関係の分割、ロ、支配関係の分割、ハ、共同で事業を営む場合の分割のいずれの場合も金銭等不交付が要件ですが、この金銭等不交付は適格合併、適格現物出資、適格株式交換、適格株式移転においても同様の要件となっています。

(注1)完全支配関係が継続する分割
 完全支配関係の分割とは、次に掲げるいずれかの関係をいいます。(法令4の3⑥)
一 分割前に当該分割に係る分割法人と分割承継法人との間にいずれか一方の法人による完全支配関係があり、かつ、当該分割後に当該分割法人と分割承継法人との間にいずれか一方の法人による完全支配関係が継続することが見込まれている場合における当該分割法人と分割承継法人との間の関係 
※ ただし、当該分割が、無対価合併の場合は次の関係に限られます。
    (無対価合併とは分割法人に分割承継法人の株式その他の資産が交付されない分割をいいます。)
イ 分割承継法人が分割法人の発行済株式等の全部を保有する関係
ロ 分割法人が分割承継法人の発行済株式等の全部を保有する関係


 ※ 当該分割後に当該分割法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には当該分割後に当該分割法人と分割承継法人との間に当事者間の完全支配関係があり、当該適格合併後に当該適格合併に係る合併法人と当該分割承継法人との間に当事者間の完全支配関係が継続する必要があります。
 当該分割後に分割承継法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には当該分割の時から当該適格合併の直前の時まで当該分割法人と分割承継法人との間に当事者間の完全支配関係が継続する必要があります。
  
※ 完全支配関係 (法2①十二の七の六、令4の2②)
 完全支配関係とは、一の者が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する次の①②の関係(以下、当事者間の完全支配の関係といいます。)又は一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係をいいます。
 ① 一の者が法人の発行済株式等の全部を保有する場合における当該一の者と当該法人との間の関係(直接完全支配関係)
 ② 当該一の者及びこれとの間に直接完全支配関係がある一若しくは二以上の法人又は当該一の者との間に直接完全支配関係がある一若しくは二以上の法人が他の法人の発行済株式等の全部を保有するときは、当該一の者は当該他の法人の発行済株式等の全部を保有するものとみなされます。
 ( 一の者にはその者が個人である場合には、その者及びこれと特殊の関係のある個人を含みます。)
 ( 法人の発行済株式等は当該法人が有する自己の株式又は出資を除いた発行済株式若しくは出資をいい、発行済株式の総数のうちに従業員持株会社と役員または使用人のストックオプション行使による所有株式が5%未満のその株式を除きます。)

二 分割前に当該分割に係る分割法人と分割承継法人との間に同一の者による完全支配関係があり、かつ、当該分割後に当該分割法人と分割承継法人との間に当該同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれている場合における当該分割法人と分割承継法人との間の関係
 
  ※ 無対価分割の場合、分割型分割にあつては次のイからハまでに掲げる関係がある場合における当該完全支配関係に、分社型分割にあつては次のニに掲げる関係がある場合における当該完全支配関係に、それぞれ限られます。

イ 分割承継法人が分割法人の発行済株式等の全部を保有する関係
ロ 一の者が分割法人及び分割承継法人の発行済株式等の全部を保有する関係
ハ 分割承継法人及び当該分割承継法人の発行済株式等の全部を保有する者が分割法人の発行済株式等の全部を保有する関係
ニ 分割法人が分割承継法人の発行済株式等の全部を保有する関係


 ※ 当該分割後に当該同一の者を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には、当該分割後に当該分割法人と分割承継法人との間に当該同一の者による完全支配関係があり、当該適格合併後に当該分割法人と分割承継法人との間に当該適格合併に係る合併法人による完全支配関係が継続する必要があります。
 当該分割後に当該分割法人又は分割承継法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には、当該分割の時から当該適格合併の直前の時まで当該分割法人と分割承継法人との間に当該同一の者による完全支配関係が継続する必要があります。

(注2)支配関係が継続する分割

 支配関係の分割とは、次に掲げるいずれかの関係をいいます。(法令4の3⑦)
一 分割前に当該分割に係る分割法人と分割承継法人との間にいずれか一方の法人による支配関係があり、かつ、当該分割後に当該分割法人と分割承継法人との間にいずれか一方の法人による支配関係(当事者間の支配関係」)が継続することが見込まれている場合における当該分割法人と分割承継法人との間の関係
 ※ 当該分割が無対価分割である場合にあつては、次のイ若しくはロ又は第ハに掲げる関係がある場合における当該支配関係
イ 分割承継法人が分割法人の発行済株式等の全部を保有する関係
ロ 分割法人が分割承継法人の発行済株式等の全部を保有する関係
ハ 分割承継法人及び当該分割承継法人の発行済株式等の全部を保有する者が分割法人の発行済株式等の全部を保有する関係


 ※ 当該分割後に当該分割法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には当該分割後に当該分割法人と分割承継法人との間に当事者間の支配関係があり、当該適格合併後に当該適格合併に係る合併法人と当該分割承継法人との間に当事者間の支配関係が継続することとし、当該分割後に分割承継法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には当該分割の時から当該適格合併の直前の時まで当該分割法人と分割承継法人との間に当事者間の支配関係が継続すること。

 ※ 支配関係 (法2①十二の七の五、令4の2①)
 支配関係とは、一の者が法人の発行済株式等の総数若しくは総額の100分の50を超える数若しくは金額の株式等を直接若しくは間接に保有する①②の関係(当事者間の支配の関係)又は一の者との間に当事者間の支配の関係がある法人相互の関係をいいます。

 ① 一の者が法人の発行済株式等の総数又は総額の100分の50を超える数又は金額の株式等を保有する場合における当該一の者と法人との間の関係(直接支配関係)。

 ② 当該一の者及びこれとの間に直接支配関係がある1若しくは2以上の法人又は当該一の者との間に直接支配関係がある一若しくは二以上の法人が他の法人の発行済株式等の総数又は総額の100分の50を超える数又は金額の株式等を保有するときは、当該一の者は当該他の法人の発行済株式等の総数又は総額の100分の50を超える数又は金額の株式等を保有するものとみなされます。
 ( 一の者にはその者が個人である場合には、その者及びこれと特殊の関係のある個人を含みます。)
 ( 発行済株式等とは当該法人が有する自己の株式又は出資を除いた発行済株式若しくは出資をいいます。)

二 分割前に当該分割に係る分割法人と分割承継法人との間に同一の者による支配関係があり、かつ、当該分割後に当該分割法人と分割承継法人との間に当該同一の者による支配関係が継続することが見込まれている場合における当該分割法人と分割承継法人との間の関係
   ※ 無対価分割の場合、分割型分割にあつては次のイからハまでに掲げる関係がある場合における当該支配関係に、分社型分割にあつては次のニに掲げる関係がある場合における当該支配関係に、それぞれ限られます。

イ 分割承継法人が分割法人の発行済株式等の全部を保有する関係
ロ 一の者が分割法人及び分割承継法人の発行済株式等の全部を保有する関係
ハ 分割承継法人及び当該分割承継法人の発行済株式等の全部を保有する者が分割法人の発行済株式等の全部を保有する関係
ニ 分割法人が分割承継法人の発行済株式等の全部を保有する関係


 ※ 当該分割後に当該同一の者を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には、当該分割後に当該分割法人と分割承継法人との間に当該同一の者による支配関係があり、当該適格合併後に当該分割法人と分割承継法人との間に当該適格合併に係る合併法人による支配関係が継続する必要があります。
 当該分割後に当該分割法人又は分割承継法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には、当該分割の時から当該適格合併の直前の時まで当該分割法人と分割承継法人との間に当該同一の者による支配関係が継続する必要があります。

(注3)共同で事業を営む場合の分割
 共同で事業を営む場合の分割とは、完全支配関係の分割又は支配関係の分割以外の分割のうち、次に掲げる要件の全てに該当するものをいいます。(法令4の3⑧)
 ただし、当該分割が分割型分割で、かつ、当該分割に係る分割法人の株主等の数が50人以上である場合については、一から五までに掲げる要件に該当するものをいいます。
   なお、当該分割が無対価分割にあつては、次に掲げる関係がある分割型分割に限ります。
イ 分割承継法人が分割法人の発行済株式等の全部を保有する関係
ロ 分割承継法人及び当該分割承継法人の発行済株式等の全部を保有する者が分割法人の発行済株式等の全部を保有する関係

一 お互いの事業が相互に関連。
 分割に係る分割法人の分割事業と当該分割に係る分割承継法人の分割承継事業とが相互に関連するものであること。
 ※ 分割事業とは、当該分割法人の当該分割前に営む事業のうち、当該分割により分割承継法人において営まれることとなるものをいいます。
 ※分割承継事業とは、当該分割承継法人の当該分割前に営む事業のうちのいずれかの事業をいい、当該分割が複数新設分割である場合にあつては、他の分割法人の分割事業をいいます。

二 事業規模又は特定役員の要件(いずれかの要件を満たすこと。)
①事業規模
 分割に係る分割法人の分割事業と当該分割に係る分割承継法人の分割承継事業(当該分割事業と関連する事業に限ります。)のそれぞれの売上金額、当該分割事業と分割承継事業のそれぞれの従業者の数若しくはこれらに準ずるものの規模の割合がおおむね5倍を超えないこと
②特定役員
 当該分割前の当該分割法人の役員等のいずれかと当該分割承継法人の特定役員のいずれかとが当該分割後に当該分割承継法人の特定役員となることが見込まれていること。
 ※ 特定役員とは社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役若しくは常務取締役又はこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者をいいます。

三 主要資産負債の移転
 分割により分割法人の分割事業に係る主要な資産及び負債が分割承継法人に移転していること。
  ※ 当該分割後に当該分割承継法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には、当該主要な資産及び負債が、当該分割により当該分割承継法人に移転し、当該適格合併により当該適格合併に係る合併法人に移転することが見込まれていること。

四 従業者の引継ぎ
 分割に係る分割法人の当該分割の直前の分割事業に係る従業者のうち、その総数のおおむね100分の80以上に相当する数の者が当該分割後に当該分割に係る分割承継法人の業務に従事することが見込まれていること。
 ※ 当該分割後に当該分割承継法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には、当該相当する数の者が、当該分割後に当該分割承継法人の業務に従事し、当該適格合併後に当該適格合併に係る合併法人の業務に従事することが見込まれていること。

五 分割事業の引継ぎ
 
分割に係る分割法人の分割事業が当該分割後に当該分割承継法人において引き続き営まれることが見込まれていること。
 ※ ただし、当該分割事業は分割承継法人の分割承継事業と関連する事業に限られます。
 ※ 当該分割後に当該分割承継法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には、当該分割事業が、当該分割後に当該分割承継法人において営まれ、当該適格合併後に当該適格合併に係る合併法人において引き続き営まれることが見込まれていること。

六 株式の継続保有
イ 分割型分割
 当該分割型分割の直前の当該分割型分割に係る分割法人の株主等で当該分割型分割により交付を受ける分割承継法人の株式又は分割承継親法人株式のいずれか一方の株式(議決権のないものを除きます。)の全部を継続して保有することが見込まれる者(注)、並びに当該分割型分割に係る分割承継法人及び当該分割型分割に係る他の分割法人が有する当該分割法人の株式(議決権のないものを除きます。)の数を合計した数が当該分割法人の発行済株式等(議決権のないものを除きます。)の総数の100分の80以上であること。
 (注) 当該分割型分割後に当該者を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には当該分割型分割後に当該者が当該株式の全部を保有し、当該適格合併後に当該適格合併に係る合併法人が当該株式の全部を継続して保有することが見込まれるときの当該者とし、
 当該分割型分割後に当該分割承継法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には当該分割型分割の時から当該適格合併の直前の時まで当該株式の全部を継続して保有することが見込まれるときの当該者とします。
ロ 分社型分割
 当該分社型分割に係る分割法人が当該分社型分割により交付を受ける分割承継法人の株式又は分割承継親法人株式のいずれか一方の株式の全部を継続して保有することが見込まれていること。(注)
 (注)当該分社型分割後に当該分割法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には当該分社型分割後に当該分割法人が当該株式の全部を保有し、当該適格合併後に当該適格合併に係る合併法人が当該株式の全部を継続して保有することが見込まれていることとし、当該分社型分割後に当該分割承継法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には当該分社型分割の時から当該適格合併の直前の時まで当該分割法人が当該株式の全部を継続して保有することが見込まれていることとします。 

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