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会社の税金 - 合併➂
2015/1/1 菊 池 芳 平
前回の適格合併に続いて今回は非適格合併の取扱いを見てみましょう。
非適格合併では被合併法人において資産負債の時価譲渡、合併法人においてはその資産負債の時価取得による移転をしたものとして取り扱われます。
合併法人では非適格合併等対価額がその移転を受けた資産及び負債の時価純資産価額を超えるときは、その超える部分の金額は、資産調整勘定の金額となります。
一方、法人の株主等にはみなす配当が発生する場合があるので注意が必要です。
非適格合併の取扱い
被合併法人の資産負債の時価譲渡による所得計算
内国法人が合併により合併法人にその有する資産及び負債の移転をしたときは、その合併法人にその移転をした資産及び負債のその合併の時の価額による譲渡をしたものとして、その内国法人の各事業年度の所得の金額を計算します。
この場合、その合併によりその資産及び負債の移転をしたその内国法人は、その合併法人から新株等(注1)をその時の価額により取得し、直ちにその新株等をその内国法人の株主等に交付したものとされています。(法62①、法令123①)
(注1)新株等は、その合併法人がその合併により交付したその合併法人の株式(出資を含みます。)その他の資産(法人税法24条2項の配当等の額とみなす規定により株式割当等を受けたものとみなされるその合併法人の株式その他の資産を含みます。)をいいます。
合併により合併法人に移転をした資産及び負債のその移転による譲渡に係る譲渡利益額又は譲渡損失額は、その合併に係る最後事業年度(被合併法人の合併の日の前日の属する事業年度をいいます。)の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入します。(法62②)
合併により合併法人に移転をする負債には、その内国法人の法人税(注1)及び地方法人税(注2)として納付する金額並びに地方税法の規定によりその法人税に係る道府県民税及び市町村民税(注3)として納付する金額でその申告書の提出期限がその合併の日以後であるもの及び内国法人の合併により消滅する新株予約権に代えてその新株予約権の新株予約権者に交付すべき資産の交付に係る債務が含まれます。(法令123②➂)
(注1)退職年金等積立金に対する法人税、法第38条第1項第2号(損金に算入される法人税)に掲げる法人税及び附帯税を除きます。
(注2)地方法人税法第6条第4号(基準法人税額)に定める基準法人税額に対する地方法人税、同項第5号に掲げる地方法人税及び附帯税を除きます。
(注3)都民税及びこれらの税に係る均等割を含みます。
合併法人の資産負債の時価取得
合併法人が被合併法人から資産および負債の移転を受けた場合のその資産負債の取得価額はその移転時の価額に相当する金額、すなわち時価となります。(法令32①三、54①六他)
非適格合併等により移転を受ける資産負債に係る資産調整勘定
内国法人が非適格合併に係る被合併法人から資産又は負債の移転を受けた場合において、非適格合併等対価額(注1)がその移転を受けた資産及び負債の時価純資産価額(注2)を超えるときは、その超える部分の金額は、資産調整勘定の金額とします。(法62の8①)
(注1)非適格合併により交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額
(注2)その資産(営業権にあつては、営業権のうち独立した資産として取引される慣習のあるものに限ります。)の取得価額の合計額からその負債の額の合計額を控除した金額をいいます。
この資産調整勘定は当初計上額を60で除して計算した金額にその事業年度の月数を乗じて計算した金額に相当する金額を、その事業年度において減額し、その減額すべきこととなつた日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入します。(法62の8④)
非適格合併等により移転を受ける資産負債に係る負債調整勘定
被合併法人等から資産又は負債の移転を受けた場合において、退職給与債務引受額及び短期重要債務見込額は、それぞれの金額を負債調整勘定の金額とします。(法62の8②、法令123の10⑦⑧))
非適格合併等に係る被合併法人等から資産又は負債の移転を受けた場合において、その非適格合併等に係る非適格合併等対価額がその被合併法人等から移転を受けた資産及び負債の時価純資産価額に満たないときは、その満たない部分の金額は、負債調整勘定の金額とします。(法令123の10③)
負債調整勘定の金額を有する内国法人は、次に掲げる場合に該当する場合には、その負債調整勘定の金額につき、その該当することとなつた日の属する事業年度(その該当することとなつた日が自己を被合併法人とする合併の日である場合には、その合併の日の前日の属する事業年度)においてそれぞれに定める金額を減額しなければならないことになっています。(法62の8⑥)
一 退職給与引受従業者が退職その他の事由によりその内国法人の従業者でなくなつた場合又は退職給与引受従業者に対して退職給与を支給する場合 退職給与負債調整勘定の金額のうちこれらの退職給与引受従業者に係る部分の金額
二 短期重要債務見込額に係る損失が生じ、若しくは非適格合併等の日から3年が経過した場合又は自己を被合併法人とする合併(適格合併を除きます。)を行う場合若しくはその残余財産が確定した場合 短期重要負債調整勘定の金額のうちその損失の額に相当する金額(その3年が経過した場合又はその合併を行う場合若しくはその残余財産が確定した場合にあつては、その短期重要負債調整勘定の金額)
この負債調整勘定の金額(差額負債調整勘定)は、当初計上額を60で除して計算した金額にその事業年度の月数を乗じて計算した金額に相当する金額を、その事業年度において減額し、その減額すべきこととなつた日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入することとされています。(法62の8⑦、法令123の10⑦)
内国法人が自己を被合併法人、分割法人又は現物出資法人とする適格合併、適格分割又は適格現物出資(適格合併等といいます。)を行つた場合には、その適格合併等の区分に応じ、それぞれ定められた資産調整勘定の金額及び負債調整勘定の金額は、その適格合併等に係る合併法人、分割承継法人又は被現物出資法人(合併法人等)に引き継ぐものとされ、合併法人等が引き継ぎを受けたこれらの金額は、合併法人等が適格合併等の時において有するものとみなされます。(法62の8⑨⑩)
株主等の取り扱い
配当等とみなす金額
法人の株主等である内国法人がその法人の非適格合併により受けた金銭その他の資産の価額の合計額がその法人の資本金等の額のうちその交付の基因となつたその法人の株式又は出資に対応する部分の金額を超えるときは、その超える部分の金額は、剰余金の配当、利益の配当又は剰余金の分配とみなされます。(法24①一)
この場合、合併法人は各株主等に、交付の基因となった事由とその事由の生じた日を通知しなければならないこととなっています。(法令23④)
譲渡損益の取扱い
① 内国法人が、その内国法人が有していた旧株を発行した法人の合併によりその株式の交付を受けた場合の譲渡対価の額は、旧株のその合併の直前の帳簿価額に相当する金額となっており、譲渡損益は生じません。ただし、この場合の合併は、その法人の株主等に合併法人の株式又は親法人株式のいずれか一方の株式以外の資産(注)が交付されなかつたものに限られています。(法61の2②)
(注)株主等に対する剰余金の配当等として交付された金銭その他の資産と合併に反対する株主等に対するその買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産を除きます。
② ①以外の事由による株式以外の資産が交付された場合は、被合併法人株式の時価を対価の額(みなし配当の金額を控除した金額)として譲渡損益を計算し、譲渡契約日の属する事業年度の所得の金額の計算上益金の額又は損金の額に算入します。(法61の2①
この場合には株式の取得価額は、その時の価額すなわち時価となります。(法令119①二十六)
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