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債権者の税金対策 D一部回収不能額の貸倒引当金



2011/12/1  菊 池 芳 平

はじめに
 法人の有する金銭債権について、その全額が回収できない場合は法基通9−6−2に掲げる要件のもとに貸倒損失の計上が認められるわけですが、今回はその一部の金額につきその取立て等の見込みがない場合について検討します。
 法人税法52条及び法人税法施行令96条1項2号では、債務超過企業や被災企業にたいする個別評価金銭債権の一部の金額につきその取立て等の見込みがないと認められる場合には、一定の要件のもとに損金経理による貸倒引当金の繰入を認めています。

 法人税法施行令第96条 貸倒引当金勘定への繰入限度額
法第52条第1項(貸倒引当金)に規定する政令で定める場合は、次の各号に掲げる場合とし、同項に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、当該各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 省略

二 当該内国法人が当該事業年度終了の時において有する個別評価金銭債権に係る債務者につき、債務超過の状態が相当期間継続し、かつ、その営む事業に好転の見通しがないこと、災害、経済事情の急変等により多大な損害が生じたことその他の事由が生じていることにより、当該個別評価金銭債権の一部の金額につきその取立て等の見込みがないと認められる場合(前号に掲げる場合を除く。)当該一部の金額に相当する金額


この場合の相当期間とは
 上記2号の 「債務超過の状態が相当期間継続し、かつ、その営む事業に好転の見通しがないこと」における「相当期間」とは、「おおむね一年以上」とされ、その債務超過に至った事情と事業好転の見通しをみて、その事由が生じているかどうかの判定をするものとされています。(法基通11−2−6)
 
( この点、法基通9−6−1に掲げる債務免除による貸倒損失が認められる場合の相当期間の場合は、少なくとも数年以上とされており、貸倒引当金の場合より厳格になっていることに注意を要します。)
 
当該一部の金額に相当する金額の計算

 また、「当該個別評価金銭債権の一部の金額につきその取立て等の見込みがないと認められる場合」の「当該一部の金額に相当する金額」については、通常は実質基準によりその金銭債権の額から担保物の処分による回収可能額や人的保証に係る回収可能額などを控除して算定しますが、以下の場合は、人的保証に係る回収可能額の算定上、回収可能額を考慮しないことができるとされています。(法基通11−2−7)

(1) 保証債務の存否に争いのある場合で、そのことにつき相当の理由のあるとき
(2) 保証人が行方不明で、かつ、当該保証人の有する資産について評価額以上の質権、抵当権(以下「質権等」 といいます。)が設定されていること等により当該資産からの回収が見込まれない場合
(3) 保証人について令第96条第1項第3号《貸倒引当金勘定への繰入限度額》に掲げる事由が生じている場合
(4) 保証人が生活保護を受けている場合(それと同程度の収入しかない場合を含みます。)で、かつ、当該保証人の 有する資産について評価額以上の質権等が設定されていること等により当該資産からの回収が見込まれないこ と。
(5) 保証人が個人であって、次のいずれにも該当する場合
 イ 当該保証人が有する資産について評価額以上の質権等が設定されていること等により、当該資産からの回収が見込まれないこと。
 ロ 当該保証人の年収額(その事業年度終了の日の直近1年間における収入金額をいいます。)が当該保証人に係る保証債務の額の合計額(当該保証人の保証に係る金銭債権につき担保物がある場合には当該金銭債権の額から当該担保物の価額を控除した金額をいいます。以下11-2-7において同じ。)の5%未満であること。
(注)1 当該保証人に係る保証債務の額の合計額には、当該保証人が他の債務者の金銭債権につき保証をしている場合には、当該他の債務者の金銭債権に係る保証債務の額の合計額を含めることができる。
(注)2 上記ロの当該保証人の年収額については、その算定が困難であるときは、当該保証人の前年(当該事業年度終了の日を含む年の前年をいいます。)分の収入金額とすることができる。

その取立て等の見込みがないと認められる場合」とは
 さらに、「その他の事由が生じていることにより、当該個別評価金銭債権の一部の金額につきその取立て等の見込みがないと認められる場合」には、以下に掲げる場合が含まれます。この場合、その取立て等の見込みがないと認められる金額とは、その回収できないことが明らかになった金額又はその未収利息として計上した金額をいうとされています。(法基通11−2−8)
(1) 法人の有するその金銭債権の額のうち担保物の処分によって得られると見込まれる金額以外の金額につき回収できないことが明らかになった場合において、その担保物の処分に日時を要すると認められるとき
(2) 貸付金又は有価証券(以下「貸付金等」といいます。)に係る未収利息を資産に計上している場合において、当該計上した事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度)終了の日(当該貸付金等に係る未収利息を2以上の事業年度において計上しているときは、これらの事業年度のうち最終の事業年度終了の日)から2年を経過した日の前日を含む事業年度終了の日までの期間に、各種の手段を活用した支払の督促等の回収の努力をしたにもかかわらず、当該期間内に当該貸付金等に係る未収利息(当該資産に計上している未収利息以外の利息の未収金を含みます。)につき、債務者が債務超過に陥っている等の事由からその入金が全くないとき

個別貸倒引当金を適用する場合の注意点
 この他、個別貸倒引当金を適用する場合は、確定申告書に個別貸倒引当金繰入限度額の損金算入に関する明細の記載が必要となります(法52B)。 また、法人税法施行令96条各号の事由が生じていることを証する書類や、担保権の実行等により取立て又は弁済の見込みがあると認められる部分の金額がある場合はその金額を明らかにする書類の保存が必要となります。(法令96C、法規25の4)



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