会社の整理と租税債権(1)再建型
1.会社の整理にはどのような種類があるか
2.税金はどのような優先順位で弁済されるか
2011/5/1 菊 池 芳 平
会社の整理には、裁判所が関与する法的整理と、裁判外の私的整理(任意整理)がありますが、これらの手続きは、その目的によってさらに清算型と再建型に分かれます。
一般に税金、特に国税は国税徴収法第8条の国税優先の原則によって、「国税は、納税者の総財産について、別段の定めがある場合を除き、すべての公課その他の債権に先だって徴収する。」 とされています。
では会社整理の場合の税金(注)は他の債権との関係で、どのような優先順位のもとに徴収されていくのでしょうか?
(注)ここで言う税金は、会社更生法第2条15項や破産法第97条1項4号等に規定されているところの「租税等の請求権」をいい、「国税徴収法又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権」をいいます。
今回はこれらの会社整理の手続にスポットをあてて、税金がどのような優先順位で徴収されるかを検討することとします。
1.民事再生法による再建型整理の場合
@ 債権の取扱い
弁済の優先順位は、「共益債権又は一般優先債権」→「再生債権」→「開始後債権」の順とされています。
共益債権と一般優先債権は再生手続きによらないで、随時弁済されます。(民再84、119、121、122、123)
A 税金の弁済
民事再生法では、税金は一般の優先権がある債権として、一般の優先債権(民再122@)又は共益債権(民再119@二に該当する場合)に該当することとされており、再生手続きによらずに随時弁済することとされています。(民再122A、121@)
従って、税金については再生計画により債権の一部カットや、弁済時期の延長等がされることはないとされています。
B 滞納処分
民事再生法では、「他の手続きの中止命令等」(民再26)や、「再生債権に基づく強制執行等の包括的禁止命令」(民再27)、さらに「他の手続きの中止等」(民再39)において、強制執行等の手続きの対象が「再生債権」となっていることから、一般優先債権や共益債権とされる税金は、中止命令や包括的禁止命令の対象とならず、税金の滞納処分が中止されることはないとされています。
2.会社更生法による再建型整理の場合
@ 債権の取扱い
弁済の優先順位は、原則として「共益債権」→「更生担保権」→「優先的更生債権」→「更生債権」→「約定劣後更生債権」→「開始後債権」の順とされていますが、税金については異種権利間の公正・衡平の原則の適用外となり、かつ債権の調査・確定の対象とされない等の規定に注意を要します。(会更168@BC)(会更134@A)(会更142@一164@)
共益債権は更生計画の定めるところによらないで、随時弁済され、更生債権等(更生債権又は更正担保権)に先立って弁済されますので更生手続きの対象外となります。(会更132@A)
A 税金の弁済
A 共益債権
ア)更生手続開始後の更正会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分に関する費用の請求権と認定された税金の請求権は共益債権とされます(会更127@二)。
イ)更生手続開始前の原因に基づく源泉徴収にかかる所得税、消費税、地方消費税、石油ガス税等の会社更生法129条に規定する特定の税金で更生手続き開始当時まだ納期限の到来していないものは、共益債権とされます。(会更129)
B 優先的更生債権
更生手続き開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権と認定された税金の請求権は原則として共益債権や更生担保権とされるものを除いて優先的更生債権として取り扱われます。(会更2G)
B 滞納処分
会社更生法では、「他の手続きの中止命令等」(会更24A)や、「包括的禁止命令」(会更25@B二)において、一定の要件のもとに、裁判所によって国税滞納処分の中止(会更24ABD)や禁止(会更25@)を命じることができることとされています。
さらに更生手続開始の決定があったときは、「他の手続きの中止等」(会更50A)として当該決定の日から原則として1年間は、国税滞納処分はすることができず、既にされている国税滞納処分は中止することとされています。(会更50AB)
これらはいずれも共益債権を徴収するためのものは除かれます。(会更24A他)
3.私的整理による再建型整理の場合
私的整理(任意整理)では、国税優先の原則(国徴8条)、地方税優先の原則(地税14条)により税金債権が優先されます。
また、新たな滞納処分は禁止されず、既にされている滞納処分は中止されずに続行されます。
【参考図書】
永石一郎 他共著「倒産処理実務ハンドブック」(中央経済社)
中村慈美 著「法的・私的整理における債権者・債務者の税務」(大蔵財務協会)
倒産・再生再編六法 2011年版(民事法研究会)
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