要注意先・赤字企業の資金繰り対処法
- 金融検査マニュアル自己査定別表1 -
2010/11/1 菊 池 芳 平
はじめに
私たちは資金の融資を受けるとき、借り換えのとき、条件変更のとき等に、金融機関の窓口を訪れるわけですがその時にどう話していいのか分からないことも多いと思います。
その時のための考え方のヒントが、金融検査マニュアル自己査定別表1 (以下金融検査マニュアルといいます。) に書かれています。
そこで要注意先(注)の企業(債務者)について金融検査マニュアルをもとに対処法を探ってみたいと思います。
(注)
要注意先とは、金利減免・棚上げ等により貸出条件に問題のある債務者、元本返済若しくは利息支払いの事実上延滞等により履行状況に問題のある債務者、財務内容に問題がある債務者など今後の管理に注意を要する債務者をいいます。要注意先債務者はさらに要管理先の債務者とその他の債務者に分類されます。(自己査定別表1−1−(3)−A)
Q1 (創業赤字の場合)
当社は会社を設立して2年目ですが、当初の計画より売上が20%落ち込んだため赤字続きです。そこで資金が不足してきたため金融機関に融資の申し込みをしようと思いますがどのように対応すべきでしょうか?
A
金融検査マニュアルでは創業赤字については一定のルールのもとに債務者区分を正常先と査定することを認めています。
そのルールとは
(1)まず当初の事業計画が合理的でかつ実現可能なものであこと。(合実計画)
(2)さらに原則として5年以内に黒字化し、(5年以内黒字化)
(3)かつ売上高等と当期利益が当初の事業計画に比較して概ね7割以上確保されていることです。
(7割以上確保)
従って融資の申し込みにあたっては、当初の事業計画がこれらのルールに従って作成され運用されていること、そして現在の状況とこれからの利益計画を具体的な資料を呈示しながら説明する必要があります。
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Q2 (一過性の赤字または返済能力のある赤字の場合)
当社は金利減免・棚上げを行っており、最近では元本返済と利息の支払いは延滞がちです。財務内容は債務超過ではありませんが赤字です。このような状況で当社は金融機関の利用にあたってどう対応すべきでしょうか?
A
あなたの会社は原則として要注意先の債務者区分になると思われます。
しかし、金融検査マニュアルによると以下に該当する場合は債務者区分を原則として正常先と判断しても差し支えないものとされています。
(1)その赤字が臨時突発的な原因からくる一過性の赤字で短期間に黒字になることが確実であること。
(2)中小・零細企業の赤字でその返済能力に特に問題がないと認められる場合。
そこで金融機関にどのように説明するかですが、
(1)の一過性の赤字に該当する場合は、その事情を関係資料を呈示してよく説明し、金融機関に納得してもらう必要があります。
(2)の返済能力のある赤字の場合は、代表者等の報酬給与の支払い状況、代表者等の他の収入や資産の内容等、保証能力等の経営の実態を説明し金融機関の返済に支障がない理由を資料を用意して説明する必要があります。
あなたの会社の技術力や販売営業力等の強み、成長性、収益性の見通しについても説明します。
(1)(2)の説明資料はA41枚から2枚くらいにまとめて提出すると良いと思います。
なお、金融検査マニュアルではキャッシュフローによる債務償還能力を重要な検査ポイントと位置づけていることからこの点についても説明できるようにします。
金融検査マニュアルについて
金融検査マニュアルは、銀行法第25条により、金融検査官がその業務の健全かつ適切な運営を確保するために金融機関を検査する際の手引書として平成10年7月に策定され、翌平成11年4月に公表されました。
護送船団方式から自己責任原則によるプロセスチェックへと大きな環境変化により、金融機関はその自己資本比率算定のために公正なルールによる自己査定(資産評価)が求められることになったのですが、同時にいざという場合は早期是正措置が発動されることとなったのです。
金融機関と企業(債務者)は資産査定とりわけ、債務者区分、担保・保証による調整、債権の分類に関して、その向上のために、さらなる経営努力と経営改善のためのリレーションシップが求められています。
(次回の12月は債務超過企業の経営改善計画を掲載の予定です。)
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