マーケティングは万能か
(新規事業立ち上げの場合)
2009/10/1 菊 池 芳 平
今日、マーケティングは経営のなかでますます重要な地位を占めつつあります。そこで今回は、経営の課題解決のためのマーケティングについて設例をもとに考えてみたいと思います
【設例】
ある経営者は現在の事業が多数乱戦状態にあり将来の見通しも立たないため、新規事業の立ち上げを検討しました。
経営者は、知人に相談したり業界情報紙をもとに考えた結果、新規事業を立ち上げることにしました。
この経営者はこの新規事業に進出すべきでしょうか?
【研究】
この設例の場合、経営者が意志決定の参考とした情報や新規事業の経営計画の内容を詳細に分析しないと判断できません。
新規事業進出の判断資料として、一般に次の起業機会の評価が必要不可欠と言われます。
1.市場性 (市場規模、ニーズの動向、成長性)
2.経済性 (収益採算性・損益分岐点及びキャッシュフローの黒字転換時期))
3.実現可能性 (価格、技術、商品サービス等の競争優位性・到達可能性。技術・知識・企業能力の市場適合性)
4.自社資源の分析(自社の強みと弱みの分析、経営チームの事業の適合性)
(菊 池 芳 平資料:起業機会の評価チェックポイント50より抜粋)
1番の市場性については市場調査をもとに有用な情報の収集が必要です。これはマーケティングの得意とする分野です。
2番の経済性の評価は売上げの見通しをもとに資金の収支と損益の計算の必要があります。これにはファイナンスがかかわってきます
3番の実現可能性と4番の自社資源の分析は、いずれも会社内部の経営資源に関わることで、競合と自社の注意深い分析が必要です。
マーケティングの定義をニーズに応えて利益を上げること。(コトラー&ケラー:マーケティング・マネジメント第12版))、経営戦略の定義をその持てる力(経営資源)の効果的配分と進むべき方向の選択としますと、顧客志向をコンセプトとするマーケティング的な発想だけではこの課題は解決できないと思われます。
この事業の意志決定においてはマーケティングの発想と経営戦略の発想、さらに経済性(採算性)の計算分析が必要なことがわかります。
経営者は不確実にしてリスクの伴う意志決定を求められることが多いわけですが、小さな失敗はともかく、その決定が致命的なリスクを伴う場合は、常に詳細な調査・分析と慎重な判断が求められます。
「致命的なとは、たとえば、年商2億円の会社が経営者の独断により銀行借入金による設備資金5千万円で新規事業を立ち上げたとします。ところが起業機会の詳細な分析評価をしなかったために開業当初から赤字続きで、さらに不足資金として自宅を担保に5千万円の運転資金の融資を受けて営業を続けると、たちまち銀行借入金は1億円となり破産状態に陥ります。
このような場合経営者は、当初資金5千万円の回収に固執しますから容易に撤退出来ない心理状態になります。進出拡大は容易でも撤退縮小は難しいと言われる所以です。このような事例は法人個人問わずに意外に多くみられるものです。」
経営者は頑固・頑迷・傲慢・プライド、見栄等の気持ちを持ってはならないと八起会の野口氏は強調されています。不断のこころの修練と財務やマーケティング、経営戦略の日々新しい知識の習得に努めこれを経営行動に活かす。これが今日の経営環境下にある経営者の必要条件と言っても過言ではないと考えます。
■新着経営情報 ■過去情報
|