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会社の税金-グループ法人税制 (その1)
( 完全支配関係がある法人間の取引の損益 )



2014/9/1  菊 池 芳 平

はじめに
 グループ経営には、意思決定の迅速化や事業執行の責任の明確化を図るために本社の事業部門を分社化する動きがみられ、最近では単なる分社化ではなく、関連会社を100%子会社化してグループ経営を強化する企業が増大していると言われています。
 このような法人の組織形態の多様化に対応し、課税の中立性や公平性等の観点から、法人税法では100%グループ内の法人間において一定の資産の移転が行われた場合であっても実質的にこれらの資産の支配は継続していることから、一定の戻入れ事由が生じるまでその譲渡損益を繰り延べる措置が講じられています。(参考:平成22年度改正税法のすべて)

譲渡損益の繰延べ
 法人(内国法人である普通法人又は協同組合等に限ります。)がその有する譲渡損益調整資産(注1)(注2)を他の完全支配関係(注3)がある法人に譲渡した場合には、その譲渡損益調整資産に係る譲渡損益額は、その譲渡した事業年度の所得の金額の計算上繰り延べることとされています。(法第61条の13①、令122条の14①
 
  (注1)譲渡損益調整資産となる資産
①固定資産
②土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除きます。)
➂有価証券
④金銭債権
⑤繰延資産 
 (注2)譲渡損益調整資産から除かれる資産
①売買目的有価証券
②譲受法人において売買目的有価証券とされる有価証券
➂譲渡直前の帳簿価額が1,000万円に満たない資産(①を除き、財務省令で定める単位に区分した後のそれぞれの資産の帳簿価額
 (注3)完全支配関係とは
 完全支配関係とは、一の者が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する①②の関係(以下、当事者間の完全支配の関係といいます。)又は一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係をいいます。

 ① 一の者が法人の発行済株式等の全部を保有する場合における当該一の者と当該法人との間の関係(直接完全支配関係)

 ② 当該一の者及びこれとの間に直接完全支配関係がある一若しくは二以上の法人又は当該一の者との間に直接完全支配関係がある一若しくは二以上の法人が他の法人の発行済株式等の全部を保有するときは、当該一の者は当該他の法人の発行済株式等の全部を保有するものとみなされます。

 ※ 一の者にはその者が個人である場合には、その者及びこれと特殊の関係のある個人を含みます。
 ※ 法人の発行済株式等は当該法人が有する自己の株式又は出資を除いた発行済株式若しくは出資をいい、発行済株式の総数のうちに従業員持株会社と役員または使用人のストックオプション行使による所有株式が5%未満のその株式を除きます。

譲渡損益の戻入れ
① 譲渡、償却、評価換え、貸倒れ、除却等による戻入れ 
 譲渡した内国法人が譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額につき譲渡損益の繰延べの適用を受けた場合において、譲受法人においてその譲渡損益調整資産の譲渡、償却、評価換え、貸倒れ、除却その他の政令で定める事由が生じたときは、その譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額は、その内国法人の各事業年度(完全支配関係を有しないこととなつたこと及び連結納税の開始又は連結グループへの加入に伴う戻入れの適用を受ける事業年度以後の事業年度を除きます。)の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入することとされています。(法第61条の13②)

② 完全支配関係を有しないこととなった場合の戻入れ
 譲渡した内国法人が譲渡損益調整資産に係る譲渡損益の繰延べの適用を受けた場合(その譲渡損益調整資産の適格合併に該当しない合併による合併法人への移転により譲渡損益の繰延べの適用を受けた場合を除きます。)において、その内国法人がその譲渡損益調整資産に係る譲受法人との間に完全支配関係を有しないこととなつたときは、その譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額
(その有しないこととなつた日の前日の属する事業年度前の各事業年度の所得の金額又は各連結事業年度の連結所得の金額の計算上益金の額又は損金の額に算入された金額を除きます。)は、その内国法人のその前日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入することとされています。
 ただし、次に掲げる事由に基因して完全支配関係を有しないこととなつた場合を除きます。(法第61条の13③)
一 その内国法人の適格合併による解散(ただし、合併法人(法人を設立する適格合併にあつては、他の被合併法人のすべて。)がその内国法人との間に完全支配関係がある内国法人であるものに限ります。)
二 その譲受法人の適格合併による解散(ただし、合併法人がその譲受法人との間に完全支配関係がある内国法人であるものに限ります。)

➂ 連結納税の開始又は連結グループの加入に伴う戻入れ
 連結開始直前事業年度又は連結加入直前事業年度以前の各事業年度において譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額につき譲渡損益の繰延べの適用を受けた譲渡法人である場合には、その譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額のうちその連結開始直前事業年度又はその連結加入直前事業年度前の各事業年度の所得の金額又は各連結事業年度の連結所得の金額の計算上益金の額又は損金の額に算入された金額以外の金額
(譲渡損益調整額)は、その連結開始直前事業年度又は連結加入直前事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入することとされています。(法第61条の13④、令122条の14⑪
 ただし、この規定は譲渡損益調整資産のうち次に掲げる譲渡損益調整額を除くこととされています。
一 譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額からその譲渡損益調整資産に係る調整済額を控除した金額が1000万円に満たない場合におけるその譲渡損益調整資産
二 法人税法施行令第14条の8第2号ロからニまでの時価評価資産等の範囲に掲げる譲渡損益調整額に係る譲渡損益調整資産


譲渡法人が適格合併による解散した場合の繰延べの扱い
 譲渡した内国法人が譲渡損益調整資産に係る譲渡損益の繰延べの適用を受けた場合において、その内国法人が適格合併
(合併法人(法人を設立する適格合併にあつては、他の被合併法人のすべて)がその内国法人との間に完全支配関係がある内国法人であるものに限ります。)により解散したときは、その適格合併に係る合併法人のその適格合併の日の属する事業年度以後の各事業年度においては、その合併法人をその譲渡利益額又は譲渡損失額につき譲渡損益の繰延べの適用を受けた法人とみなすこととされています。(法第61条の13⑤)

譲受法人が適格合併等により譲渡損益調整資産を移転した場合に、合併法人等を譲受法人とみなす場合
 内国法人が譲渡損益調整資産に係る譲渡損益の繰延べの適用を受けた場合において、その譲渡損益調整資産に係る譲受法人が適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配(注1)により合併法人等
(注2)にその譲渡損益調整資産を移転したときは、その移転した日以後に終了するその内国法人の各事業年度においては、その合併法人等をその譲渡損益調整資産に係る譲受法人とみなすこととされています。(法第61条の13⑥)
(注1)合併法人、分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人(法人を設立する適格合併、適格分割又は適格現物出資にあつては、他の被合併法人、他の分割法人又は他の現物出資法人のすべて)がその譲受法人との間に完全支配関係がある内国法人であるものに限ります。
(注2)合併法人等とは合併法人、分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人をいいます。


非適格合併の場合の譲渡損益と取得価額
 非適格合併に係る被合併法人がその合併による譲渡損益調整資産の移転につき譲渡損益の繰延べの規定の適用を受けた場合には、その譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額に相当する金額はその合併に係る合併法人のその譲渡損益調整資産の取得価額に算入しないものとし、その譲渡損益調整資産に係る譲渡損失額に相当する金額はその合併法人のその譲渡損益調整資産の取得価額に算入することとされています。(法第61条の13⑦)

譲渡法人の通知義務
 法人がその有する譲渡損益調整資産該当資産を他の内国法人
(その内国法人との間に完全支配関係がある普通法人又は協同組合等に限ります。)に譲渡した場合には、その譲渡の後遅滞なく、その他の内国法人に対し、その譲渡した資産が譲渡損益調整資産該当資産である旨(減価償却資産又は繰延資産について簡便法の適用を受けようとする場合はその旨を含みます。)を通知しなければならないことになっています。令122条の14⑮)

譲受法人の通知義務

① 回答通知
 譲渡法人の通知を受けた他の内国法人
(適格合併に該当しない合併により資産の移転を受けたものを除きます。)は、次に掲げる場合の区分に応じその事項を、その通知を受けた後遅滞なく、その通知をした内国法人(その内国法人が適格合併により解散した後は、その適格合併に係る合併法人)に通知しなければならないこととされています。令122条の14⑯)

一 譲渡法人の通知に係る資産が売買目的有価証券に該当する場合 その旨
二 譲渡法人の通知に係る資産がその他の内国法人において減価償却資産又は繰延資産に該当する場合において、その資産につき簡便法の適用を受けようとする旨の通知を受けたとき その資産について適用する耐用年数又はその資産の支出の効果の及ぶ期間

② 戻入れ事由の発生通知
 譲受法人は、譲渡損益調整資産につき譲渡、償却、評価換え、貸倒れ、除却等による戻入れ事由が生じたときは、その旨及びその生じた日を、その事由が生じた事業年度終了後遅滞なく、その譲渡損益調整資産の譲渡をした内国法人
(譲渡損益の繰延べの適用を受けたその内国法人が適格合併により解散した後は、その適格合併に係る合併法人)に通知しなければならないこととされています。(令122条の14⑰)


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