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債権者の税金対策 G一括評価による貸倒引当金(措法57の10)



2012/3/1  菊 池 芳 平


はじめに
 一括評価による貸倒引当金の繰入限度額の計算のうち令96Aに定める貸倒実績率による計算方法については前回に記載しましたので、ここでは措法57の10に定める中小法人等の法定繰入率による計算方法について検討することとします。
 中小法人等の法定繰入率による計算方法については以下のとおりとなっています。

中小企業等の一括評価による貸倒引当金の特例とは (措法57の10)
 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人(注)が法人税法第52条第2項の規定の適用を受ける場合には、同項の規定にかかわらず、当該事業年度終了の時における同項に規定する一括評価金銭債権の帳簿価額(政令で定める金銭債権にあつては、政令で定める金額を控除した残額)の合計額に政令で定める割合を乗じて計算した金額をもって、同項に規定する政令で定めるところにより計算した金額とすることができます。
 (注)法人で各事業年度終了の時において法人税法第52条第1項第1号イからハ(H23.11.30成立H23.12.2施行)までに掲げる法人(保険業法に規定する相互会社及びこれに準ずるものとして政令で定めるものを除く。以下、「中小法人」といいます。)に該当する法人をいいます。

 措法57の10@に規定する政令で定める金銭債権は、その債務者から受け入れた金額があるためその全部又は一部が実質的に債権とみられない金銭債権とし、同項に規定する政令で定める金額は、その債権とみられない部分の金額に相当する金額とされます。(措令33の9A)

 平成10年4月1日に存する法人は、法第57条の10第1項に規定する政令で定める金銭債権は以下の(イ)の金銭債権とし、同項に規定する政令で定める金額は(ロ)の金額とすることができます。(措令33の9B)

(イ) 当該法人の当該事業年度終了の時における措法57の10@の一括評価金銭債権(次の(ロ)において「一括評価金銭債権」といいます。) のすべて
(ロ) 当該法人の当該事業年度終了の時における一括評価金銭債権の額に、平成10年4月1日から平成12年3月31日までの間に開始した各事業年度終了の時における一括評価金銭債権の額の合計額のうちに当該各事業年度終了の時におけるその債務者から受け入れた金額があるためその全部又は一部が実質的に債権とみられない部分の金額の合計額の占める割合(当該割合に小数点以下3位未満の端数があるときは、これを切り捨てる。) を乗じて計算した金額

中小法人等の法定繰入率は以下のとおりです。(措令33の9C)
 法第57条の10第1項及び第2項に規定する政令で定める割合は、これらの規定の法人の営む主たる事業が次の各号に掲げる事業のいずれに該当するかに応じ当該各号に定める割合とされます。
一 卸売及び小売業(飲食店業及び料理店業を含むものとし、第4号に掲げる割賦販売小売業を除く。) 1000分の10
二 製造業(電気業、ガス業、熱供給業、水道業及び修理業を含む。) 1000分の8
三 金融及び保険業 1000分の3
四 割賦販売小売業(割賦販売法(昭和36年法律第159号)第2条第1項第1号に規定する割賦販売の方法により行う小売業をいう。)並びに包括信用購入あつせん業(同条第3項に規定する包括信用購入あつせん(同項第1号に掲げるものに限る。)を行う事業をいう。)及び個別信用購入あつせん業(同条第4項に規定する個別信用購入あつせんを行う事業をいう。) 1000分の13
五 前各号に掲げる事業以外の事業 1000分の6

次に掲げるような金額が実質的に債権とみられないものに該当します。(措通57の10-1)
 措令33の9Aに規定する「その債務者から受け入れた金額があるためその全部又は一部が実質的に債権とみられない金銭債権」には、債務者から受け入れた金額がその債務者に対し有する金銭債権と相殺適状にあるものだけでなく、金銭債権と相殺的な性格をもつもの及びその債務者と相互に融資しているもの等である場合のその債務者から受け入れた金額に相当する金銭債権も含まれるのであるので、次に掲げるような金額がこれに該当するとされています。
(1) 同一人に対する売掛金又は受取手形と買掛金又は支払手形がある場合のその売掛金又は受取手形の金額のうち買掛金又は支払手形(注)の金額に相当する金額
(2) 同一人に対する売掛金又は受取手形と買掛金がある場合において、当該買掛金の支払のために他から取得した受取手形を裏書譲渡したときのその売掛金又は受取手形の金額のうち当該裏書譲渡した手形(支払期日の到来していないものに限ります。)の金額に相当する金額
(3) 同一人に対する売掛金とその者から受け入れた営業に係る保証金がある場合のその売掛金の額のうち保証金の額に相当する金額
(4) 同一人に対する売掛金とその者から受け入れた借入金がある場合のその売掛金の額のうち借入金の額に相当する金額
(5) 同一人に対する完成工事の未収金とその者から受け入れた未成工事に対する受入金がある場合のその未収金の額のうち受入金の額に相当する金額
(6) 同一人に対する貸付金と買掛金がある場合のその貸付金の額のうち買掛金の額に相当する金額
(7) 使用人に対する貸付金とその使用人から受け入れた預り金がある場合のその貸付金の額のうち預り金の額に相当する金額
(8) 専ら融資を受ける手段として他から受取手形を取得し、その見合いとして借入金を計上した場合又は支払手形を振り出した場合のその受取手形の金額のうち借入金又は支払手形の金額に相当する金額
(9) 同一人に対する未収地代家賃とその者から受け入れた敷金がある場合のその未収地代家賃の額のうち敷金の額に相当する金額

 
 (注) 措置法に規定する中小企業等の法定繰入率による一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入限度額の計算については、実質的に債権とみられない部分の金額に支払手形を含めることとなります。しかし個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入限度額の計算については、支払手形が振出後転々と流通することから、個別債務者の債権から直接的に相殺できないと考えられ、実質的に債権とみられない部分の金額に含めないこととされているので注意が必要です。


2以上の事業を兼営している場合の計算 (措通57の10-4)
 基準法人が措令33の9Cに掲げる事業の2以上を兼営している場合における貸倒引当金勘定への繰入限度額は、主たる事業について定められている割合により計算し、それぞれの事業ごとに区分して計算するのではないことに留意します。この場合において、いずれの事業が主たる事業であるかは、それぞれの事業に属する収入金額又は所得金額の状況、使用人の数等事業の規模を表わす事実、経常的な金銭債権の多寡等を総合的に勘案して判定することとされています。

(注) 法人が2以上の事業を兼営している場合に、当該2以上の事業のうち一の事業を主たる事業として判定したときは、その判定の基礎となった事実に著しい変動がない限り、継続して当該一の事業を主たる事業とすることができます。

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