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債権者の税金対策 F一括評価による貸倒引当金(令96条)



2012/2/1  菊 池 芳 平

はじめに
 一括評価による貸倒引当金の繰入限度額の計算は、令96Aに定める貸倒実績率による計算方法と措法57の10に定める中小法人等の法定繰入率による計算方法があります。
 このうちの貸倒実績率による計算方法については以下のとおりとなっています。

法人税法 第52条 貸倒引当金
1 略

2 内国法人が、その有する売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権(個別評価金銭債権を除く。以下この条において「一括評価金銭債権」という。)の貸倒れによる損失の見込額として、各事業年度(被合併法人の適格合併に該当しない合併の日の前日の属する事業年度及び残余財産の確定の日の属する事業年度を除く。)において損金経理により貸倒引当金勘定に繰り入れた金額については、当該繰り入れた金額のうち、当該事業年度終了の時において有する一括評価金銭債権の額及び最近における売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権の貸倒れによる損失の額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額(第6項において「一括貸倒引当金繰入限度額」という。)に達するまでの金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。


 
 上記の法第52条第2項に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、同項の内国法人の当該事業年度終了の時において有する一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額に貸倒実績率を乗じて計算した金額となります。

貸倒実績率の計算は以下のとおりです。(令96A)
 この場合の貸倒実績率は以下のAに掲げる金額のうちにBに掲げる金額の占める割合(当該割合に小数点以下4位未満の端数があるときは、これを切り上げます。)を乗じて計算した金額をいいます。

A 当該内国法人の前3年内事業年度(当該事業年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度)終了の時における一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額を当該前3年内事業年度における事業年度の数で除して計算した金額

B 当該内国法人の@とAの合計額からBに掲げる金額の合計額を控除した残額に、12を乗じてこれを前3年内事業年度における事業年度の月数の合計数で除して計算した金額
@ 前3年内事業年度において売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権(売掛債権等)の貸倒れにより生じた損失の額の合計額
A 前3年内事業年度において各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された個別評価貸倒引当金勘定の金額
B 前3年内事業年度において各事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入された個別評価貸倒引当金勘定の金額

「売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権」には、以下のような債権が含まれます。(法基通11-2-16)
(1) 未収の譲渡代金、未収加工料、未収請負金、未収手数料、未収保管料、未収地代家賃等又は貸付金の未収利子で、益金の額に算入されたもの
(2) 他人のために立替払をした場合の立替金(11-2-18の(4)に該当するものを除きます。)
(3) 未収の損害賠償金で益金の額に算入されたもの
(4) 保証債務を履行した場合の求償権
(5) 法第81条の18第1項《連結法人税の個別帰属額の計算》に規定する「法人税の負担額」又は「法人税の減少額」として帰せられる金額に係る未収金(当該法人との間に連結完全支配関係がある連結法人に対して有するものを除きます。)
(注) 法人がその有する売掛金、貸付金等の債権について取得した先日付小切手を同項に規定する金銭債権に含めている場合には、その計算を認めることとされています。

裏書譲渡をした受取手形については以下のとおりになります。(法基通11-2-17)
 法人がその有する売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権(以下この款において「売掛債権等」といいます。) について取得した受取手形につき裏書譲渡(割引を含みます。以下11-2-17において同じです。) をした場合には、当該売掛金、貸付金等の既存債権を売掛債権等に該当するものとして取り扱うことになっています。
 したがって、裏書により取得した受取手形(手形法(昭和7年法律第20号)第18条第1項本文又は第19条第1項本文に規定する裏書により取得したものを除きます。) で、その取得の原因が売掛金、貸付金等の既存債権と関係のないものについて更に裏書譲渡をした場合には、その受取手形の金額は売掛債権等の額に含まれないことに注意が必要です。
(注) この取扱いは、その裏書譲渡された受取手形の金額が財務諸表の注記等において確認できる場合に適用することとされています。

次に掲げるようなものは、売掛債権等には該当しないこととなっています。(法基通11-2-18)
(1) 預貯金及びその未収利子、公社債の未収利子、未収配当その他これらに類する債権
(2) 保証金、敷金(借地権、借家権等の取得等に関連して無利息又は低利率で提供した建設協力金等を含みます。)、預け金その他これらに類する債権
(3) 手付金、前渡金等のように資産の取得の代価又は費用の支出に充てるものとして支出した金額
(4) 前払給料、概算払旅費、前渡交際費等のように将来精算される費用の前払として一時的に仮払金、立替金等として経理されている金額
(5) 金融機関における他店為替貸借の決済取引に伴う未決済為替貸勘定の金額
(6) 証券会社又は証券金融会社に対し、借株の担保として差し入れた信用取引に係る株式の売却代金に相当する金額
(7) 雇用保険法、雇用対策法、障害者の雇用の促進等に関する法律等の法令の規定に基づき交付を受ける給付金等の未収金
(8) 仕入割戻しの未収金
(9) 保険会社における代理店貸勘定(外国代理店貸勘定を含む。)の金額
(10) 法第61条の5第1項《デリバティブ取引に係る利益相当額の益金算入等》に規定する未決済デリバティブ取引に係る差金勘定等の金額
(11) 法人がいわゆる特定目的会社(SPC)を用いて売掛債権等の証券化を行った場合において、当該特定目的会社の発行する証券等のうち当該法人が保有することとなったもの
(注) 仮払金等として計上されている金額については、その実質的な内容に応じて売掛債権等に該当するかどうかを判定することになります。



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