貸出条件緩和債権の改善と注意点
−貸出条件緩和債権関係Q&A−
2011/2/1 菊 池 芳 平
借り手からすると返済条件緩和債務とも言うべき元本返済猶予の債務を、金融検査マニュアル等では、一般に貸出条件緩和債権といいます。
この用語の意味と改善方法は、前回の「リスケジュールと経営再建」で述べたところですが、このほか貸出条件緩和債権の改善について参考になると思われる事項をご紹介します。
1.経営状況の改善策の注意点
貸出条件緩和債権の卒業基準の一つに債務者の経営状況の改善があります。(監督指針V-4-9-4-3(2)Bハ)
この経営状況の改善の程度とは具体的にどのような状況をいうのでしょうか。
これについて貸出条件緩和債権関係Q&A では一般に
@キヤツシュフローの相当程度の改善、
A期間損益の黒字化、
B債務超過の解消
等があれば、改善と判断できるとされています。(貸出条件緩和債権関係Q&A 問24)
当たり前といえば当たり前ですが、経営改善に当たってはこのような基本内容で、実現可能なプランを策定する必要があります。
2.正常な運転資金の注意点
企業の経営活動に必要な運転資金の借入が貸出条件緩和債権に該当するかどうかですが、監督指針や金融検査マニュアルの記述が参考になります。
@ 監督指針
監督指針では、正常な運転資金を短期貸出にて同一条件で反復継続している貸出金で、実態的に経営再建又は支援を目的としていないことが合理的に説明可能な場合には、その貸出金は基準金利、総合採算の如何によらず貸出条件緩和債権に該当しない旨明示しています。(貸出条件緩和債権関係Q&A 問10)
A金融検査マニュアル(自己査定別表1(6)分類対象外債権)
金融検査マニュアル自己査定別表1では、正常な運転資金とは、正常な営業を行っていく上で恒常的に必要と認められる運転資金と定義し、算定方法(売上債権+棚卸資産−仕入債務)のなかには回収不能額や不良在庫、設備支払手形は除くこととしています。
このほか破綻懸念先、実質破綻先及び破綻先への運転資金債権は正常な運転資金として取り扱わないこと、要注意先に対しては債務者の状況等により個別に判断する旨が述べられています。
B金融検査マニュアル別冊中小企業融資編( 5.貸出条件緩和債権)
金融検査マニュアル別冊中小企業融資編では、正常運転資金となる書換え継続の手形貸し付けは債務者の支援目的の期限延長でないことから貸出条件緩和債権には該当しない旨述べられています。
3.信用保証協会保証による借入の注意点
経営資金の借入に当たっては信用保証協会の保証付き融資を受けることが多いわけですが、この信用保証協会の保証付きの借入金が貸出条件緩和債権に該当するかどうかは気になるところです。
監督指針と金融検査マニュアルの以下の内容が参考になりますが、一般にほとんどの場合は貸出条件緩和債権に該当しないものと判断してよさそうです。
@監督指針
監督指針では、
担保(優良担保、一般担保を問わない)や信用保証協会保証などの保証(優良保証、一般保証を問わない)等により当該貸出金が100%保全されて信用リスク等が極めて低いと考えられる場合で、かつ調達コスト(資金調達コスト十経費コスト)が確保されてい場合は、原則として基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されていると判断して差し支えないものとされています。
したがってこの場合は貸出条件緩和債権に該当しないものと判断して差し支えないものとされます。
(貸出条件緩和債権関係Q&A 問18)
A金融検査マニュアル別冊中小企業融資編
金融検査マニュアル別冊中小企業融資編においても、上記@と同様のことが述べられています。
(金融検査マニュアル別冊中小企業融資編 5.貸出条件緩和債権 (1)貸出条件緩和債権の検証)
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