特定経営力向上設備等を取得した場合の税額控除
2022/4/1 菊 池 芳 平
制度の概要
この制度は、青色申告の中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けた一定の中小企業者などが平成29年4月1日から令和5年3月31日までの期間(指定期間)内に、新品の特定経営力向上設備等を取得等して、国内にあるその法人の指定事業の用に供した場合に、その指定事業供用事業年度において、特別償却又は税額控除を認めるものです。
(注1)所有権移転外リース取引により取得した特定経営力向上設備等については、特別償却の規定は適用されませんが、税額控除の規定は適用されます。
適用対象法人
適用対象法人は、中小企業等経営強化法に規定する経営力向上計画の認定を受けた青色申告書を提出する中小企業者又は農業協同組合等若しくは商店街振興組合とされています。
適用対象事業年度
適用対象事業年度は、指定期間内に適用対象資産を取得等をして指定事業の用に供した場合におけるその指定事業の用に供した日を含む事業年度です。
ただし、解散(合併による解散を除きます。)の日を含む事業年度及び清算中の各事業年度は除きます。
適用対象資産
特定経営力向上設備等は、新品の生産等設備を構成する機械及び装置、工具、器具及び備品、建物附属設備並びにソフトウェアで、一定の規模以上のものとされています。ただし、貸付けの用に供する資産は、特定経営力向上設備等には該当しません。
① 生産等設備とは、その法人が行う生産活動、販売活動、役務提供活動その他収益を稼得するために行う活動の用に直接供される減価償却資産で構成されているものをいいいます。(本店、寄宿舎等の建物、事務用器具備品、乗用自動車、福利厚生施設のようなものは該当しません。)
② 一定の規模以上のものとは、それぞれ次のものをいいます。
イ 機械及び装置 1台又は1基の取得価額が160万円以上のもの
ロ 工具、器具及び備品 1台又は1基の取得価額が30万円以上のもの
ハ 建物附属設備 一の取得価額が60万円以上のもの
ニ ソフトウェア 一の取得価額が70万円以上のもの(複写して販売するための原本、開発研究用のもの又はサーバー用のオペレーティングシステムのうち一定のものなどは除きます。)
③ 特定経営力向上設備等とは、中小企業等経営強化法施行規則第16条第2項に規定する経営力向上に著しく資する設備等(生産性向上設備・収益力強化設備・デジタル化設備・経営資源集約化設備)をいいます。
(中小企業等経営強化法第17条第1項に規定する経営力向上計画に記載されたものに限ります。)
指定事業
この制度の適用対象となる指定事業は次に掲げる事業です。
製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、採石業、砂利採取業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店業(料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業にあっては、生活衛生同業組合の組合員が行うものに限ります。)、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業、沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、情報通信業、損害保険代理業、不動産業、駐車場業、物品賃貸業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、映画業、教育、学習支援業、医療、福祉業、協同組合(他に分類されないもの)及びサービス業(他に分類されないもの)
(注)娯楽業(映画業を除きます。)は対象になりません。
また、性風俗関連特殊営業に該当する事業も対象となりません。
税額控除限度額
税額控除限度額は、特定経営力向上設備等の取得価額の7%相当額(特定中小企業者等は10%)となります。
この場合、税額控除の控除上限は、この制度における税額控除、中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除の税額控除及び特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除制度における税額控除の合計でその事業年度の調整前法人税額の20%相当額が上限となります。
税額控除限度超過額の繰越し
税額控除限度額がその事業年度の法人税額の20%相当額を超えることから、その事業年度において税額控除限度額の全部を控除しきれなかった場合は、その控除しきれなかった金額(繰越税額控除限度超過額)について1年間の繰越しが認められています。
注意事項
1. 一の資産についてこの制度の特別償却と税額控除との重複適用は認められません。
2. この制度の特別償却又は税額控除の適用を受ける資産は、租税特別措置法上の圧縮記帳、他の制度による特別償却又は他の税額控除の規定の重複適用は認められません。
3. 税額控除の適用を受けるためには、控除を受ける金額を確定申告書等に記載するとともに、その金額の計算に関する明細書、経営力向上計画の写し、経営力向上計画に係る認定書の写しを添付して申告する必要があります。
繰越税額控除限度超過額の繰越控除を受けるためには、繰越税額控除限度超過額が生じた事業年度以後の各事業年度の確定申告書に繰越税額控除限度超過額の明細書を添付し、かつ、繰越税額控除限度超過額の繰越控除を受けようとする事業年度の確定申告書等に繰越控除を受ける金額を記載し、その金額の計算に関する明細書を添付して申告します。
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