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次期社長は君だ! (2)ある日の社内ミーティング


2019/7/1  菊 池 芳 平


好々爺社長:それではこれよりミーティングを始める。本日のテーマは次期社長についてだが・・・・

幹部社員:・・・・・・

好々爺社長:イエスマン君、君が次期社長だ! なりたまえ。

イエスマン部長 : え!!突然、私ですか?

好々爺社長:そうだ。大企業では飛び越して社長になる人もいるご時世じゃ。このくらいなんでもなかんべー。

イエスマン部長:会社の借り入れはいくらあるんですか?

好々爺社長:これこれしかじかで・・・・

イエスマン部長:大変な金額ですね。保証人とか担保不動産はだれが設定しているんですか?

好々爺社長:全部、わしじゃ!

イエスマン部長:私が社長になったら会社の保証と担保は私が引き継ぐんですか?

好々爺社長:当たり前だのクラッカーだ。

イエスマン部長:困ったなー、収入も少ないしー、財産ないしー、女房ぶーたれるしー・・・社長、私はイヤです!

―イエスマン部長にノーと言われた好々爺社長は、落ち込みながらも二人で、ぱみゅぱみゅ経営相談所に行きました。

相談員からは次のような説明がありました。

 

後継者候補との対話上の障害は何か?

中小企業白書によると後継者(候補)との対話上の障害として、①経営の引継ぎ時期を決めていないが最も多く、ついで ②会社の将来性が見通せないこと、③金融機関に対する経営者の個人保証などの課題が多くなっています。

 

【後継者(候補)と対話する上での障害】

(出典 : 中小企業白書2017年版)

後継問題を確実に解決するには、これらの障害を除去し、後継者とともに経営の見える化と磨き上げ(経営改善)を実践することが必要不可欠です。具体的には経営改善計画と事業承継計画を後継者も交えて策定し実行することになります。

一般に、事業承継に向けた準備の進め方は、次のステップで進めます。    

1.目標となる経営の引継ぎ時期の決定

2.承継に向けた経営改善 見える化と磨き上げ

3.事業承継計画の策定と実行

(注)承継に向けた経営改善は、事業承継者が事業を承継しやすくするためと、経営者保証対策のために行います。

 

目標となる事業承継の期限はいつか?

後継者対策は、前号でご紹介したように早めに期限を決めて積極的に行動することが重要です。 

事業承継の必要性と重要性をよく認識したうえで準備期間と承継時期を決めます。

 

承継に向けた経営改善のポイントは

①経営のスリム化

まずは不要な資産を売却し、そのお金で会社の借入金を減らします。高級車や別荘、投資不動産で非効率なもの等が処分対象です。

個人と会社の資金貸借の整理

会社と現経営者間の資金の貸付や借入も清算し、会社と現経営者の一体性を解消します。

③ 経営の見える化と磨き上げ

金融機関の信用を高め、かつ後継者が後を継ぎやすくするためには、経営の状況や課題、経営資源等の現状を正確に把握経営の見える化)し、経営改善(磨き上げ)をすることが必要です。

 

見える化の取り組みチェックリスト

経営理念

沿革

市場の動向(大きさ、成長性、変化)と機会、脅威

競合先の動向

会社の強みと弱み

事業に利用されている個人不動産の把握

経営者保証の有無

会社借入の担保

個人と会社の貸借関係

中小企業の会計に関する指針や中小企業の会計に関する基本要領の実施の有無

財務(部門別損益等)、非財務(ローカルベンチマーク・知的資産経営報告書)の把握

ABC分析や貢献度分析による主力商品、事業の把握

不良品の状況把握

 

磨き上げの取り組みチェックリスト

不要な資産、滞留在庫の処分

法人個人の一体性の解消

財務情報をリアルタイムで把握

本業の競争力強化(業績の成行き予測と目標のギャップ→課題抽出→改善実行)

目的・目標の共有→情報の共有→成果の公正配分

仕組みの構築→運用→検証・改善

社内の組織整備

 

(注1)経営の見える化と磨き上げでは、経営の内外環境から、会社の進むべき方向(経営戦略)と事業領域(ドメイン)を決め、抽出された課題を基に、経営改善計画(短期・中期)と行動計画(①誰が、②何を、③いつまでに、④どうやって)を策定し実行します。

(注2)見える化と磨き上げには「ローカルベンチマーク」や「事業価値を高める経営レポート(知的資産経営報告書)」の活用が有効です。

(注3)変化のスピードがどんどん早くなっていく現代の経営環境下では、業績と資金繰りの日々の把握が不可欠。クラウド会計がリアルタイムで、見える化と効率化を推進します。

 

金融機関の対応方針は

好々爺社長:経営改善のポイントはわかりましたが、保証人と担保の解除は何とかならんかねー

相談員:保証と担保の解除についてですかあ。難しいですね。しかし方法がないこともないですよ。

金融機関に経営者の個人保証と担保の解除を求めるには、「経営者保証ガイドライン」に沿って経営者が財務基盤の強化などの経営改善を進める必要があります。

具体的な対策として経営者保証ガイドラインでは「①法人と経営者との関係の明確な区分・分離②財務基盤の強化③財務状況の正確な把握と、適時適切な情報開示等による経営の透明性の確保。さらに、金融機関からの情報開示の要請に対して適時適切に誠実かつ丁寧に説明する」と説明しています。

 

好々爺社長:ちんぷんかんぷん・・・・

相談員 : 難しいですよね。

分かりやすく言うと、経営者保証を解除するには、第三者に信用信頼されうる経営体質に経営改善することです。具体的には会社の資産や収益力で十分借入金の返済が可能であり、かつ会社の財布と経営者の財布が明確に分離独立し、きちんと清算された透明な経営体質が求められます。

好々爺社長:それではたして金融機関が保証解除に応じてくれるんですかね

担当者 : 事業承継ガイドライン」によると、経営者保証ガイドラインを参考にした個人保証の解除の申し出・相談に対し、金融機関が保証解除に応じた割合は約4割となっています。また解除困難な場合でもその理由の丁寧な説明など、一定の効果が得られているようです。

 

【金融機関に経営者保証の解除の

申し出・相談を行った結果】

 

(出典:事業承継ガイドライン)

 

後継者候補との対話

好々爺社長:なるほど。それでは二つのガイドラインに沿って経営改善を進めよう。イエスマン君、さっそく相談しよう。

イエスマン部長:イエッサー。

― こうして好々爺社長とイエスマン部長は夜遅くまで経営について対話をしました。もちろん、今後の承継とそのための経営改善についてですが、好々爺社長は、これまでの経営の苦労話と経営理念について熱く語ることも忘れませんでした。

しかし、イエスマン部長はこの段階では対話に応じたものの、後継者になることを承諾してはいませんでした。

 



( 東村山法人会会報誌掲載 )

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