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次期社長は君だ!(1)好々爺社長の悩み


2019/6/1  菊 池 芳 平



好々爺社長:わしの会社もそろそろ後継者を決めんとなア。
部下:誰かイイヒトいないんですか?
好々爺社長:アレもダメ、コレもダメ・・・・・そのうち何とかなるじゃらホイ。
部下:そんなんで大丈夫ですか?心配だなー
好々爺社長:大丈夫!後継者を見つけることは嫁さんを見つけることとおんなじじゃ。
部下:どういうことですか?
好々爺社長:わしの若い時は、「30歳の峠は1人で渡らない」と決めて30前に結婚したんだ。
部下:どのように選んだんですか?
好々爺社長:容姿端麗で頭が良くて・・・と考えたんだが・・・結局、(うなるような声で)美人は3日で飽きるがブスは3日で慣れるという言葉を思い出してなあ・・・
部下:それでいまどうなっているんですか?
好々爺社長:古女房、2階から降りてアクビして・・・現実は厳しいのー。とほほー。
部下:それでは社長、次の話を聞いて対策を考えてみませんか?
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社長の地位を誰に託すか?
この課題は経営者にとっていつかは決断しなければならない重要なテーマの一つですが、後継者候補がなかなか見つからなかったり、日々の業務に追われてなかなか手が付けられず解決を先延ばしにされている経営者の方も多いと思います。
これから述べる事例のT社は、後継者候補が見つからなくて悩んだ末、思い切ってインターネットで公募したのですがうまくいかず、それまで社長の苦労を見ていた次女N氏が後継者となって実を結んだお話です。
それでは具体的にみてみましょう。


1.後継者選定―期限を決めて早めに着手
中小企業庁のアンケート調査によると、後継者の選定を始めてから了承を得るまでの期間は、回答した経営者の約4割が3年超の年数を要しています。
そのうえ後継者育成期間や経営と資産の引継ぎでさらに年数がかかることを考えると、事業承継の準備には5年から10年程度を要し、社長の平均引退年齢70歳から逆算すると60歳頃には事業承継の準備に着手する必要があるといわれています。(事業承継ガイドライン)
したがって後継者対策は、T社のように早めに期限を決めて積極的に行動することが重要となってきます。


2.後継者候補の公募と離職
 T社の場合も後継者がなかなか見つからず、インターネットで公募という思い切った行動に出たわけですが、たとえ失敗してもその積極性は評価できると思います。
大企業の役職経験者は優秀な方が多いのですが、中小企業の経営では仕事は分業化されていないことが多く、社内業務に適応できないこともあるようです。
実際T社でもこの点について、実績のない人が会長と同じように上から命令ばかりしても、従業員はついてこないと語っています。


3.次女の社長就任とその理由
その後、次女のN氏が後継者となり社長に就任しました。N新社長は就任した理由を次のように語っています。
「もともと継ぐつもりはなかったが、両親が会社を切り盛りする姿を見て育ち、折に触れて父の会社が気になっていました。
会社や業界のことは全くわからなかった    が、従業員の生活の基盤となっているこの会社を、後継者不在を理由に廃業させるのは忍びなかった。」


4.後継者に求められる能力とは?
中小企業庁のアンケート調査では、経営者から見た経営を担う後継者に求める資質・能力は、「経営を担う覚悟」が全体で最も多く、従業員規模51人以上の企業では「リーダーシップ」が最も多くなっています。
 専制(ワンマン)型、民主型、放任型のリーダーシップの類型うち、N新社長は民主型リーダーシップを目指しているようです。

5.一筋縄ではいかない事業承継
事業承継は、「後継者選定」に始まり、後継者が後を継ぎやすくするための「経営の見える化と経営改善(磨き上げ)」「金融機関からの借入金の保証や担保物件の解除」「個人と会社の資金貸借の整理」「承継株式の売買代金の資金の調達」「承継株式が贈与や相続の場合は税金対策」「親族等との調整」「従業員・取引先・金融機関との事前協議」「後継者育成」「社長引退後の生活」といった解決すべき課題がいろいろあります。
さらに、しばらくは「経営上のアドバイスや支援」も必要になってきますし事業承継の過程で経営方針をめぐって対立することもあります。
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― ところで話題は、後継者問題で悩む好々爺社長の会社に戻ります。               
T社の話を聞いて、好々爺社長はいよいよ本気で後継者対策に乗り出したようです。ある日のこと、社内ミーティングで好々爺社長は、皆がアッと驚く発言をしたのです。(次号につづく)    

( 東村山法人会会報誌掲載 )

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