いかにして高収益を確保するか - 仕事の考え方と強みについて
2019/4/1 菊 池 芳 平
游歩大全を読んで以降、ワイルドな生活にあこがれた私はキャンプ用具一式とハンモックを取り揃えました。しかしハンモックだけは使わずに押入れの奥にしまっていたのです。先日2歳半のモモちゃんが遊びに来たので、そのハンモックをせっせと部屋の端の梁に吊るして手製のブランコをつくりました。しかしモモちゃんの感想はこうでした・・・・・・・「コワイ!」
税理士のコラム今回は、会社が高収益を確保するための必要な仕事の考え方と強みについてのお話です
1.
はじめに
会社の中にはいろいろな仕事がたくさんあります。
(営業販売、人事労務、マネジメント、仕入、経理、請求、資金繰り、経営の意思決定・・・等々)
けれどもこれらの仕事がうまく機能しているかというと必ずしもそうではないようです。
手間がかからないといわれる不動産貸付業でさえも、なかなか空室が埋まらなかったり、維持修繕や管理、入居者や近隣とのトラブル、借入返済計画や税金対策などいろいろ悩むことも多いのではないでしょうか。
同業者が多い中で会社が競争において優位を維持するには、会社の仕事の一つ一つについても目を向ける必要があります。
2.
仕事の価値を上げるには?
①
仕事のつながりとは?
会社の諸活動の相互関係を体系的に整理し、仕事のつながりを価値連鎖という概念で分析解明しようとしたのがM.E ポーター( Michael E Porter )です。その提案は示唆に富み、私たちの経営活動に活用できます。
私たちの仕事が無駄なく効率的、効果的に全体最適のために機能している状態を価値連鎖が最適の状態と言います。
②
仕事の調整、最適化
会社の様々な仕事は、変転きわまりない環境に適応するために、あるいは経営目標達成のために、常に最適化に向かって調整し、進化向上させる必要があります。
それでは価値連鎖、調整、最適化の一端をご紹介しましょう。
3.
仕事のつながり- 最適化事例
-
事例A
A社は食料品を扱う小売業ですが、経営者は売上が少しでも多くなるように、欠品のないように注意をはらっています。しかし売上は多いのですが利益がでません。
一方、同業のB社は効率と効果を重視し、売れ筋で粗利益率の良い商品情報の収集と仕入の最適化に余念がありません。その結果利益が出てきたので給与を上げようと検討しています。
ポイントはB社の仕入にあります。B社の仕入は粗利益率の向上と廃棄ロスの削減という課題のために常に仮説、検証といった調整が積極的に行われ、その結果、粗利益率と不良品率はA社よりもそれぞれ1%改善されています。これは年商3億円の場合、3億円×2%で約600万円の利益の相違となります。
粗利益率UPと売れ筋情報の把握→仕入れの最適化→粗利益率UP→不良品率低下→利益UP→給与UPという価値連鎖の調整・最適化はB社が優れていると言えます。
事例B
仕事のつながり(連結関係)すなわち価値連鎖は、会社の内部だけにとどまりません。
こんどはビールメーカーと供給業者との提携による価値システム最適化の事例です。
提携内容はアルミ缶の製缶大手3社がビールメーカーの工場にビール缶を納品した後、帰り荷として製品のビールを載せて別の工場に運ぶというものです。
この提携によって、ビールメーカーと缶メーカーとの取引業者間の価値連鎖の最適化が一層進展することになります。
具体的にはCO2排出量の削減とともに、ビールメーカーは工場間配送のための自前トラックの過半数が減ることでコスト削減が可能になります。一方缶メーカーは帰り荷の配送受託料の収入で収益向上となります。(参考資料:2010/8/21日本経済新聞夕刊)
4.企業競争で優位に立つには
①仕事の進む方向が正しいか
業界の市場が飽和状態(需要に対して同業者が多い状態)になると当然、価格競争になります。
そこで考えることはたぶんこういうことではないでしょうか
□現在のビジネスに踏みとどまるべきか
□今の仕事でどのように売上と利益の増加をはかるべきか
□新たなビジネスに挑むべきか
□新たなビジネスに進出するとすればいかなる分野にすべきか
これらの判断は経営成績に大きく影響するため、正しい戦略的判断が必要です。
②仕事の強みとは
どの市場、事業、商品、サービスでも、企業に求められるもの、それは企業のもつ強みではないかと思います。
強み(優位)という言葉を辞書で調べると、他よりもまさる地位や位置。優越的地位・位置とあります。
ジョージ・S・デイ(George S.Day)によると、強み(優位性)の源泉は企業の持つ優れた経営資源と能力にあるといいます。
優れた営業力、技術力、知識と専門性、マンパワー等はその一例でしょう。
企業の競争は強みの競争でもあると言えます。
③強みを創造、強化するには
顧客と他の企業や業界の動向をよく注視し、つねに学び研究し続けながら切磋琢磨して他社がまねのしにくい強みに育てあげることが強く望まれます。同時に自社の強みを活かして、勝てる分野、方法を探すことも必要でしょう。
さいごに
他社がまねの出来ない技術やノウハウ等の仕事の強みを持つことは成熟経済下の企業競争では必須の条件と思われます。
そこで、社内の様々な仕事の見直しをして少しでも進化向上させることに努めたいものです。そしてその仕事が企業の強みに発展させられると、ポーターが言うように利益が高くかつ安定した企業に近づくと思うのです。
( 東村山法人会会報誌掲載 )
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