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消費税 - 課税対象②


2016/1/1  菊 池 芳 平

 課税対象の法令の規定は前回のとおりですが、具体的には消費税法基本通達が参考になります。そこで課税対象の主要な通達の概要を確認してみましょう。

事業としての意義 5-1-1
① 消費税の事業は、反復、継続、独立して行われることをいう。
② 個人事業者が生活の用に供している資産を譲渡する場合の譲渡は、事業には該当しない。
➂ 法人が行う資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供は、その全てが事業に該当する。

事業に関して行う家事用資産の譲渡 5-1-8
 個人事業者が行う次のような資産の譲渡は、たとえ事業のために行うものであっても、令2③の付随行為としての資産の譲渡には含まれない。
(1) 事業用資金の取得のために行う家事用資産の譲渡
(2) 事業用資産の仕入代金に係る債務又は事業用に借り入れた資金の代物弁済として行われる家事用資産の譲渡

親族間の取引 5-1-10
 個人事業者が生計を一にする親族との間で行った資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供であっても、それが事業として対価を得て行われるものであるときは、これらの行為は、資産の譲渡等に該当する。


対価を得て行われるの意義 5-1-2
 消費税法の「対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供」とは、それらの行為に対して反対給付を受けることをいうから、無償による資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供は、反対給付がないので資産の譲渡等に該当しない。
(注)ただし例外として、法第4条第5項の《資産のみなし譲渡》は、事業として対価を得て行われた資産の譲渡とみなされることに注意。

負担付き贈与の意義 5-1-5
 負担付き贈与は、資産の譲渡等に該当する。 (令2①一)

付随行為 5-1-7
 資産の譲渡等には、事業に付随して対価を得て行われる行為を含み、その付随行為には例えば、次に掲げるようなものが該当する。
(1) 職業運動家、作家、映画・演劇等の出演者等で事業者に該当するものが対価を得て行う他の事業者の広告宣伝のための役務の提供
(2) 職業運動家、作家等で事業者に該当するものが対価を得て行う催物への参加又はラジオ放送若しくはテレビ放送等に係る出演その他これらに類するもののための役務の提供
(3) 事業の用に供している建物、機械等の売却
(4) 利子を対価とする事業資金の預入れ
(5) 事業の遂行のための取引先又は使用人に対する利子を対価とする金銭等の貸付け
(6) 新聞販売店における折込広告
(7) 浴場業、飲食業等における広告の掲示

非居住者が行う取引 5-1-11
 非居住者が行う資産の譲渡等であっても、それが事業として対価を得て行われるものであるときは、これらの行為は、資産の譲渡等に該当する。

保証債務等を履行するために行う資産の譲渡 5-2-2
 他の者の債務の保証を履行するために行う資産の譲渡又は強制換価手続により換価された場合の資産の譲渡は、事業として対価を得て行われる資産の譲渡に該当する。

会報、機関紙(誌)の発行 5-2-3
 ① 対価を得て行う会報又は機関紙(誌)(会報等)の発行は、原則として資産の譲渡等に該当する。
 ② 会報等が通常の業務運営の一環として発行され構成員に配布される場合には、資産の譲渡等に該当しない。

保険金、共済金等 5-2-4
 保険金又は共済金(これらに準ずるものを含む。)は、保険事故の発生に伴い受けるものであり、資産の譲渡等の対価に該当しない。

損害賠償金 5-2-5
 ① 心身又は資産につき加えられた損害の発生に伴い受ける損害賠償金は、資産の譲渡等の対価に該当しない。
 ② その実質が資産の譲渡等の対価に該当すると認められる次のような損害賠償金は資産の譲渡等の対価に該当する。
(ア) 損害を受けた棚卸資産等が加害者(加害者に代わって損害賠償金を支払う者を含みます。)に引き渡され、当該棚卸資産等がそのまま又は軽微な修理を加えることにより使用できるときに当該加害者から当該棚卸資産等を所有する者が収受する損害賠償金
(イ) 無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無体財産権の権利者が収受する損害賠償金
(ウ) 不動産等の明渡しの遅滞により加害者から賃貸人が収受する損害賠償金

建物賃貸借契約の解除等に伴う立退料の取扱い 5-2-7
 建物等の賃借人が契約の解除に伴い賃貸人から収受する立退料は、賃貸借の権利の消滅、営業上の損失、移転等の実費補償等に伴い授受されるもので、資産の譲渡等の対価に該当しない。
(注) 建物等の賃借人たる地位を賃貸人以外の第三者に譲渡し、その対価として立退料等として収受したとしても、これらは建物等の賃借権の譲渡に係る対価として受領されるもので、資産の譲渡等の対価に該当する。
剰余金の配当等 5-2-8
 剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配(出資に係るものに限る。)は、株主又は出資者たる地位に基づき、出資に対する配当又は分配として受けるもので、資産の譲渡等の対価に該当しない。
(注) 事業者が、受ける事業分量配当(当該事業者が協同組合等から行った課税仕入れに係るものに限ります。)は、法第32条《仕入れに係る対価の返還等を受けた場合の仕入れに係る消費税額の控除の特例》の規定が適用される。
自己株式の取扱い 5-2-9
 法人が自己株式を取得する場合(証券市場での買入れによる取得を除く。)における株主から当該法人への株式の引渡し及び法人が自己株式を処分する場合における他の者への株式の引渡しは、いずれも資産の譲渡等に該当しない。

対価補償金等 5-2-10
 対価補償金は、法律により権利を収用されかつ権利の消滅に係る補償金の収受により権利者の権利が消滅し、かつ、当該権利を取得する者から支払われるもので資産の譲渡等に該当する。
 しかし、次に掲げる補償金は、対価補償金には該当しない。

(1) 損失補填補償金
(2) 休廃業等により生ずる事業上の費用補填補償金、収用等による損失補填補償金
(3) 資産の移転に要する費用の補填補償金
(4) その他対価補償金たる実質を有しない補償金
(注) 公有水面埋立法の規定に基づく公有水面の埋立てによる漁業権又は入漁権の消滅若しくはこれらの価値の減少に伴う補償金は、補償金を支払う者はこれらの権利を取得せず、資産の移転がないことから、資産の譲渡等の対価に該当しない。

自社使用等 5-2-12
 事業者が自己の広告宣伝又は試験研究等のために商品、原材料等の資産を消費し、又は使用した場合の当該消費又は使用は、資産の譲渡に該当しない。

資産の廃棄、盗難、滅失 5-2-13
 事業用資産の廃棄、盗難又は滅失は、資産の譲渡等に該当しない。

寄附金、祝金、見舞金等 5-2-14
 ① 寄附金、祝金、見舞金等は原則として資産の譲渡等に係る対価に該当しない。
 ② しかし、当該寄付金等が実質的に資産の譲渡等の対価を構成すべきものと認められるときは、その受領した金銭はその資産の譲渡等の対価に該当する。

補助金、奨励金、助成金等 5-2-15
 事業者が国等から受ける奨励金、助成金等、補助金等、のように、特定の政策目的の実現を図るための給付金は、資産の譲渡等の対価に該当しない。
(注) 雇用調整助成金、職業転換給付金、身体障害者等能力開発助成金は、資産の譲渡等の対価に該当しない。。

下請先に対する原材料等の支給 5-2-16
 ① 有償支給の原材料等の支給は、対価を得て行う資産の譲渡に該当する。
 ② 有償支給の場合であっても支給に係る原材料等を自己の資産として管理しているときは、その原材料等の支給は、資産の譲渡に該当しない。
(注) ②の場合、支給を受ける外注先等では当該原材料等の有償支給は課税仕入れに該当せず、また、当該支給をした事業者から収受すべき金銭等のうち原材料等の有償支給に係る金額を除いた金額は資産の譲渡等の対価に該当する。

役員に対する無償譲渡等 5-3-5
 ① 役員に対するみなし譲渡の規定により、法人のその役員への、資産の無償譲渡又は著しく低い対価の額の譲渡は、時価相当額が対価の額となる。
 ② しかし、役員への無償の資産貸付け又は役務の提供は、みなし譲渡の規定が適用されない。
(注) 役員に対して無償支給する場合であっても、所基通36-21《課税しない経済的利益……永年勤続者の記念品等》又は36-22《課税しない経済的利益……創業記念品等》において給与として課税しなくて差し支えないものとされている記念品等については、法第4条第5項第2号に規定する、役員に対するみなし譲渡に該当しないこととしてもよいとされています。

福利厚生施設の利用 5-4-4
 事業者が、その有する宿舎、宿泊所、集会所、体育館、食堂その他の施設を、対価を得て役員又は使用人等に利用させる行為は、資産の譲渡等に該当する。

解約手数料、払戻手数料等 5-5-2
① キャンセル料、解約損害金等は、逸失利益等に対する損害賠償金であり、資産の譲渡等の対価に該当しない。
② 解約手数料、取消手数料又は払戻手数料等のように、対価を得て行われる役務の提供は、資産の譲渡等に該当する。
 (注) 授受される金銭のうちに、解約手数料等と損害賠償金に相当する部分とが含まれている場合は、その解約手数料等に相当する部分が役務の提供の対価に該当する。しかし、区分することなく、一括して授受しているときは、その全体を資産の譲渡等の対価に該当しないものと取り扱う。

会費、組合費等 5-5-3
 ① 同業者団体、組合等がその構成員から受ける会費、組合費等については、明白な対価関係があるかどうかによって資産の譲渡等の対価であるかどうかを判定する。
 ② その判定が困難なものについて、継続して、資産の譲渡等の対価に該当ないものとし、かつ、その支払を課税仕入れに該当しないこととしている場合には、これを認める。
(注)
1 通常会費については、資産の譲渡等の対価に該当しないものとして取り扱ってもよい。
2 名目が会費等とされている場合であっても、それが実質的に出版物の購読料、映画・演劇等の入場料、職員研修の受講料又は施設の利用料等と認められるときは、その会費等は、資産の譲渡等の対価に該当する。
3 資産の譲渡等の対価に該当するかどうかの判定が困難な会費、組合費等について、この通達を適用して資産の譲渡等の対価に該当しないものとする場合には、同業者団体、組合等は、その旨をその構成員に通知するものとする。

入会金 5-5-4
 ① 入会金(返還しないものに限る。)については、対価関係があるかどうかによって資産の譲渡等の対価であるかどうかを判定する。
 ② その判定が困難なものにつき、資産の譲渡等の対価に該当しないものとし、かつ、その支払を課税仕入れに該当しないこととしている場合には、その処理が認められる。
(注) 資産の譲渡等の対価に該当するかどうかの判定が困難な入会金について、この通達を適用して資産の譲渡等の対価に該当しないものとする場合には、同業者団体、組合等は、その旨をその構成員に通知するものとされている。
 ➂ ゴルフクラブ、宿泊施設その他レジャー施設の利用又は一定の割引率で商品等を販売するなど会員に対する役務の提供を目的とする事業者が会員等の資格を付与することと引換えに収受する入会金(返還しないものに限る。)は、資産の譲渡等の対価に該当する。

出向先事業者が支出する給与負担金 5-5-10
 出向先事業者が自己の負担すべき給与負担金を出向元事業者に支出したときの当該給与負担金の額は、当該出向先事業者におけるその出向者に対する給与として取り扱う。
(注) この取扱いは、出向先事業者が実質的に給与負担金の性質を有する金額を経営指導料等の名義で支出する場合にも適用する。

労働者派遣に係る派遣料 5-5-11
 労働者の派遣を行った事業者が当該他の者から収受する派遣料等の金銭は、資産の譲渡等の対価に該当する。

無償による貨物の輸入等 5-6-2
 ① 保税地域から引き取られる外国貨物については、事業として対価を得て行われる」ものには限られないことに注意
 ② 保税地域から引き取られる外国貨物に係る対価が無償の場合、又は引取りが事業として行われるものではない場合でも法第4条第2項《外国貨物に対する消費税の課税》の規定が適用される。

国内及び国外にわたって行われる旅客又は貨物の輸送等 5-7-13
 ① 事業者が対価を得て行う国内及び国外にわたって行われる旅客、貨物の輸送、通信、郵便、信書便については、
 ② 国内を出発地、発送地、発信地、差出地とするもの及び国内を到着地、受信地、配達地とするものの全てが国内において行われた課税資産の譲渡等に該当するとともに
 ➂ 法第7条の国際輸送等に係る輸出免税等又は令第17条の国際郵便等に係る輸出免税の規定の適用がある。

特定資産の譲渡等に係る納税義務 5-8-1
 特定資産の譲渡等については、その特定資産の譲渡等を行う国外事業者が課税事業者であるかどうかにかかわらず、特定資産の譲渡等を受けた事業者が、その特定資産の譲渡等に係る特定課税仕入れについて納税義務者となる。
(注) 当分の間課税売上割合が100分の95以上の課税期間(簡易課税制度が適用されない課税期間に限る。)及び簡易課税制度が適用される課税期間については、その課税期間に行った特定課税仕入れはなかったものとして消費税法の規定が適用される。( 附則第42条及び第44条第2項)



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