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会社の税金 - 現物分配


2015/7/1  菊 池 芳 平

はじめに
 利益や剰余金の配当等が金銭以外の資産の交付により行われることを現物分配といいます。
 この現物分配は移転時の時価課税が原則ですが、適格現物分配に該当すると帳簿価額により譲渡したものとされて課税が繰り延べられます。
   
現物分配
 公益法人等及び人格のない社団等以外の法人がその株主等に対し、その法人の次に掲げる事由により金銭以外の資産の交付をすることを現物分配といいます。(法2①十二の六)
イ 剰余金の配当(株式又は出資に係るものに限るものとし、資本剰余金の額の減少に伴うもの及び分割型分割によるものを除きます。)若しくは利益の配当(分割型分割によるものを除きます。)又は剰余金の分配(出資に係るものに限ります。)
ロ 法人税法第24条第1項第3号から第6号までの配当等の額とみなす金額に掲げる事由

適格現物分配
 内国法人を現物分配法人とする現物分配のうち、その現物分配により資産の移転を受ける者がその現物分配の直前において当該内国法人との間に完全支配関係がある内国法人(普通法人又は協同組合等に限ります。)のみであるものを適格現物分配といいます。(法2①十二の十五))


現物分配法人
 現物分配によりその有する資産の移転を行つた法人を現物分配法人といいます。(法2①十二の六)

被現物分配法人
 現物分配により現物分配法人から資産の移転を受けた法人を非現物分配法人といいます。(法2①十二の六の二)

適格現物分配の取扱い
現物分配法人の所得の計算
 内国法人が適格現物分配により被現物分配法人にその有する資産の移転をしたときは、当該被現物分配法人に当該移転をした資産の当該適格現物分配の直前の帳簿価額(当該適格現物分配が残余財産の全部の分配である場合には、その残余財産の確定の時の帳簿価額)による譲渡をしたものとして、当該内国法人の各事業年度の所得の金額を計算します。(法62の5➂)
 この場合、内国法人が適格現物分配により資産の移転を受けたことにより生ずる収益の額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入されません。(法62の5④)

 内国法人の残余財産の確定の日の属する事業年度に係る地方税法の規定による事業税の額は、当該内国法人の当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されます。(法62の5⑤)

被現物分配法人の帳簿価額による引継ぎ
 内国法人が適格現物分配により現物分配法人から資産の移転を受けた場合には、当該資産の取得価額は、法第62条の5第3項(現物分配による資産の譲渡)に規定する帳簿価額に相当する金額とされています。(法令123の6①)

 残余財産の全部の分配に係る適格現物分配は、当該残余財産の確定の日の翌日に行われたものとして、法人税法の規定を適用することになっています。(法令123の6②)

非適格現物分配の取扱い
現物分配法人の所得の計算
 内国法人が非適格現物分配により被現物分配法人その他の者にその有する資産の移転をしたときは、当該被現物分配法人その他の者に当該移転をする資産の当該現物分配の時の価額による譲渡をしたものとして、当該内国法人の各事業年度の所得の金額(譲渡損益)を計算します。(法22他)

 さらに内国法人が残余財産の全部の分配又は引渡し(適格現物分配を除きます。)により被現物分配法人その他の者にその有する資産の移転をするときは、当該被現物分配法人その他の者に当該移転をする資産の当該残余財産の確定の時の価額による譲渡をしたものとして、当該内国法人の各事業年度の所得の金額を計算することになっています。(法62の5①)

 この場合、残余財産の全部の分配又は引渡しにより被現物分配法人その他の者に移転をする資産の当該移転による譲渡に係る譲渡利益額又は譲渡損失額は、その残余財産の確定の日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入します。

 内国法人の残余財産の確定の日の属する事業年度に係る地方税法の規定による事業税の額は、当該内国法人の当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入すします。

被現物分配法人の時価取得
 非適格現物分配により被現物分配法人が現物分配法人から移転を受けた資産はその移転を受けた時の価額により取得したものとされます。(法令32①三、54①六他)
 この場合、その価額は受取配当等の収益になると同時に受取配当等の益金不算入の規定を受けますが、その現物分配がみなし配当事由に該当する場合は、当該収益のうち資本金等の額のその株式又は出資に対応する部分の金額は除かれます。

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