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会社の税金 - 交際費と会議費(判例)


2014/7/1  菊 池 芳 平

会議費か交際費かをめぐって争われた事件
東京地裁 「 法人税更正処分取消請求事件(棄却)」平成16年5月14日判決




 この事件は、平成15年にテレビ番組の制作等を業務としている原告会社が、発注元等のスタッフ等と信頼関係の構築や打合せ等のため、料理店で飲食した際に、その酒食代として支払われた金員が会議費か交際費かをめぐって争われた事件です。

  それでは、原告と被告の主張の概要を裁判記録をもとにみてみましょう。


(原告の主張)(テレビ番組制作会社)
 「原告は、テレビ番組の制作等を業務としており、発注元である各テレビ番組局プロデューサーを始めとするスタッフや出演する芸能関係者等との相互信頼関係の構築と綿密な打合せをすることが必要不可欠である。そして、原告の通常の勤務時間は、午後からであり、打合せの時間等が深夜に及ぶこともある。また、打合せ場所には、放送局の近くを選ばざるを得ないし、放送局の近くには、貸会議室もないので、飲食店で会議を行うしかない。さらに、原告の事務所には会議室がない。上記の事情を勘案すれば、本件各支出は、いずれも会議に使用した費用であって、交際費ではなく会議費に該当する。本件各支出は、原告と各テレビ局の担当者との間の打合せの一環として支払われたものであり、いわばメーカーの製造原価に相当するものであるから、会計理論上交際費には該当しない。原告は、「会議費」と「交際費」とを明確に区分して会計処理をし ており、その上で、本件各支出を「会議費」として計上したのである から、交際費には該当しない。」

(被告の主張)国側当事者・○○税務署長事務承継者○○税務署長
 「本件各支出は、いずれも1軒の店の支払額が消費税抜きで1万円以上のものである。そして、その支払先は、ジャズレストラン、酒類を提供するスナック、居酒屋、鮨屋、割烹料亭、しゃぶしゃぶ店、串焼店、天ぷら店、ステーキ店、鉄板焼店、ふぐ専門店等の酒食を提供する料理店である。本件各支出は、支払先が上記のようなものであることに加え、参加 人数、内容等からしても、確実に「会議費」に当たらない 原告が、本件各支出のうちジャズ歌手乙(以下「乙」という。)に関して会議費であると主張する6件の支出についても、生演奏を聴かせるようなジャズレストランで、歌を聴きながら飲食した際の酒食代金が「会議費」に当たらないことは明らかである。」


   このような原告、被告の主張に対し裁判所は、支払先、支払金額の観点から次のように判示しています。

(裁判所の判断)(東京地裁平成16年5月14日判決
 「その場所がパブないしバー等といった酒類を伴う飲食店であり、通常会議を行う場所ということはできないこと、及びその金額も数名で1万数千円から3万数千円というものであって、通常の茶菓、弁当、昼食代と比較すると、明らかに高額に過ぎることからすれば、これが企業の内部的な費用であることなどを理由として交際費等から除外される措置法施行令37条の5第2号所定の会議費用に当たるということはできない。
 しかし、仮に原告主張のとおり、放送局の近くの飲食店で会議を行うほかなかったとしても、単純に打合せを行うだけであれば、喫茶店や軽食の食堂等もあり得るはずである。
 本件各支出の支払先である鮨屋、ジャズレストラン、スナック、居酒屋、鮨屋、割烹料亭、しゃぶしゃぶ店、串焼店、天ぷら店、ステーキ店、鉄板焼店、ふぐ専門店等といった酒食を提供する場所と前述したその支払金額を見れば、これらが、「接待、供応、慰安」等の趣旨を含めての会合であることは明らかであり、会議室に代替するような通常会議を行う場所における通常の茶菓、弁当、昼食程度の飲食物の提供とはかけ離れたものといわざるを得ない。
したがって、本件各支出は、企業の通常の内部的な費用ということができないものであり、これが措置法施行令37条の5第2号所定の会議費用に当たるということはできない。よって、原告の上記主張には理由がない。」


(会社の税金対策)  
 以上の判例から言えることは、会議費として損金算入が認められるには、その支出が、会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用であることとされ、具体的には、通常会議を行う場所において通常供与される昼食の程度を超えないことが要求されています。

 したがって交際費と会議費の区分については、それがたとえ法人の売上を得るために必要な支出だったとしても、これを無限定に損金として認めると、事業上の必要を超えた冗費濫費がされることもあるため、その趣旨を理解したうえで当局から否認を受けないように会議費としての社内規定を整備することが必要と思われます。



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