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債務者の税金対策 K資産の評価損の損金不算入等(その2)



2013/3/1  菊 池 芳 平

 前回「2013.2.1債務者の税金対策 J資産の評価損の損金不算入等(その1)」に続き、資産の評価損の特例と適用要件について検討します。

2.特 例

(2) 更生計画認可の決定があつた場合
 更生計画認可の決定があつたことにより会社更生法又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定に従つて行う評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合には、その減額した部分の金額は、その評価換えをした日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されます。(法33B)

(3) 再生計画認可の決定があつたことその他これに準ずる政令で定める事実が生じた場合
 再生計画認可の決定があつたことその他これに準ずる政令で定める事実(注1)が生じた場合において、その内国法人がその有する資産の価額につき政令で定める評定(注2)を行つているときは、その資産(ただし、評価損の計上に適しないものとして政令で定めるもの(注3)を除きます。)の評価損の額として政令で定める金額(注4)は、第1項の規定にかかわらず、これらの事実が生じた日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入します。(法33C)
(注1) 再生計画認可の決定に準ずる事実 (法令68の2@・24の2@)
 再生計画認可の決定に準ずる事実は、その法人について再生計画認可の決定があつたことに準ずる事実で、その債務処理に関する計画が次の一から三まで及び四又は五に掲げる要件に該当するものに限られます。
一 一般に公表された債務処理を行うための手続についての準則(公正かつ適正なものと認められるものであつて、次に掲げる事項が定められているもの(当該事項が当該準則と一体的に定められている場合を含む。)に限るものとし、特定の者(政府関係金融機関、株式会社企業再生支援機構及び協定銀行を除く。)が専ら利用するためのものを除く。) に従つて策定されていること。
イ 債務者の有する資産及び負債の価額の評定(以下この項において「資産評定」といいます。) に関する事項(公正な価額による旨の定めがあるものに限ります。)
ロ 当該計画が当該準則に従つて策定されたものであること並びに次号及び第3号に掲げる要件に該当することにつき確認をする手続並びに当該確認をする者(当該計画に係る当事者以外の者又は当該計画に従つて債務免除等をする者で、財務省令で定める者に限ります。) に関する事項
二 債務者の有する資産及び負債につき前号イに規定する事項に従つて資産評定が行われ、当該資産評定による価額を基礎とした当該債務者の貸借対照表が作成されていること。
三 前号の貸借対照表における資産及び負債の価額、当該計画における損益の見込み等に基づいて債務者に対して債務免除等をする金額が定められていること。
四 2以上の金融機関等が債務免除等をすることが定められていること。
五 政府関係金融機関、株式会社企業再生支援機構又は協定銀行が有する債権等につき債務免除等をすることが定められていること。

※ 再生計画認可の決定に準ずる事実の具体例としては、「私的整理に関するガイドライン」や「中小企業再生支援協議会の支援による再生計画の策定手順」 で税法適格のものがあります。(国税庁事前照会に対する文書回答事例)

(注2) 政令で定める評定は、次に掲げる事実の区分に応じそれぞれに定める評定となります。(法令68の2A)
一 再生計画認可の決定があつたこと 内国法人がその有する法第33条第4項に規定する資産の価額につき当該再生計画認可の決定があつた時の価額により行う評定
二 法第33条第4項(再生計画認可の決定があつたことその他これに準ずる政令で定める事実が生じた場合)に規定する政令で定める事実 内国法人が第24条の2第1項第1号イの資産評定に関する事項に従つて行う同項第2号の資産評定

(注3) 評価損の計上に適しないものとして政令で定める資産は、次に掲げる資産となります。(法令68の2B・24の2C)
一 再生計画認可の決定又は再生計画認可の決定に準ずる事実が生じた日の属する事業年度開始の日前5年以内に開始した各事業年度(以下「前5年内事業年度等」といいます。)において次に掲げる規定の適用を受けた減価償却資産
イ 国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入
ロ 特別勘定を設けた場合の国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入
ハ 工事負担金で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入
ニ 非出資組合が賦課金で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入
ホ 保険金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入
ヘ 特別勘定を設けた場合の保険金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入
ト 連結法人の個別益金額又は個別損金額の益金又は損金算入
チ 租税特別措置法第67条の4@AB第1項若しくは第2項の転廃業助成金等に係る課税の特例
リ 租税特別措置法第68条の102@AB第1項若しくは第2項の転廃業助成金等に係る課税の特例リ
二 短期売買商品
三 売買目的有価証券
四 償還有価証券
五 資産の価額(資産を財務省令で定める単位に区分した後のそれぞれの資産の価額とする。以下この号において同じ。) とその帳簿価額(資産を当該単位に区分した後のそれぞれの資産の帳簿価額とする。以下この号において同じ。) との差額(前5年内事業年度等において第1号イからリまでに掲げる規定の適用を受けた固定資産(同号に規定する減価償却資産を除く。)で、その価額がその帳簿価額を超えるものについては、当該前5年内事業年度等において同号イからリまでに掲げる規定により損金の額に算入された金額とその超える部分の金額とのいずれか少ない金額を控除した金額) が当該資産を有する内国法人の資本金等の額の2分の1に相当する金額と1000万円(当該内国法人の借入金その他の債務で利子の支払の基因となるものの額が10億円に満たない場合には、100万円) とのいずれか少ない金額に満たない場合の当該資産

(注4) 政令で定める金額は、次の各号に掲げる事実の区分に応じ当該各号に定める金額とされます。(法令68の2C)
一 再生計画認可の決定があつたこと
 当該再生計画認可の決定があつた時の直前のその資産の帳簿価額が当該再生計画認可の決定があつた時の価額を超える場合のその超える部分の金額
二 法第33条第4項に規定する政令で定める事実
  同項に規定する資産の当該事実が生じた時の直前のその帳簿価額が第24条の2第1項第2号の貸借対照表に計上されている価額を超える場合のその超える部分の金額

時価の取扱いについて
 法人税法では、再生計画認可の決定があったことに伴う当該再生計画認可の決定があったときの価額は、当該資産が使用収益されるものとしてその時において譲渡される場合に通常付される価額によることとされています。(法25B及び法令24の2D一)(法基通4-1-3)
 しかし、民事再生法の規定では財産を処分するものとしてしなければならず、必要がある場合は併せて、全部又は一部の財産について事業を継続するものとして評定することができるとされています。(民再124@民再規56@) 
 したがって民事再生法の規定により財産の処分価額で作成された実態貸借対照表の価額が、法人税法の求める時価 (当該資産が使用収益されるものとしてその時において譲渡される場合に通常付される価額) と異なる場合は、税務申告上の評価損益の計算にあたっては、法人税法の時価に従って行う必要があります。

(4) 完全支配関係がある他の内国法人についての不適用
 これまでに掲げた法人がこれらの法人との間に完全支配関係がある他の法人で政令で定めるもの(注)の株式又は出資を有する場合における当該株式又は出資については、これらの規定は、適用しないこととされています。(法33D)
この場合の政令で定めるものは、次に掲げる法人とされます。(法令68の3
一 清算中の内国法人
二 解散(合併による解散を除く。)をすることが見込まれる内国法人
三 内国法人で当該内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人との間で適格合併を行うことが見込まれるもの
(5) 損金の額に算入されなかつた資産の取扱い
 評価換えにより減額された金額を損金の額に算入されなかつた資産については、その評価換えをした日の属する事業年度以後の各事業年度の所得の金額の計算上、当該資産の帳簿価額は、その減額がされなかつたものとみなされます。(法33E)

(6) 適用要件(法33FG)
 この規定は、確定申告書に「評価損明細」の記載があり、かつ、「評価損関係書類」の添付がある場合(評価益がある場合には、評価益明細の記載及び評価益関係書類の添付がある場合に限られます。)に限り、適用されます。
 税務署長は、評価損明細(評価益がある場合には、評価損明細又は評価益明細)の記載又は評価損関係書類(評価益がある場合には、評価損関係書類又は評価益関係書類)の添付がない確定申告書の提出があつた場合においても、当該記載又は当該添付がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、再生計画認可の決定があつたことその他これに準ずる政令で定める事実が生じた場合の損金算入の適用することができるとされています。

 

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