債務者の税金対策 J資産の評価損の損金不算入等(その1)
2013/2/1 菊 池 芳 平
災害による著しい損傷によりその資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなつたことその他の政令で定める事実が生じた場合や再生計画や更生計画等を策定するにあたって生じた評価損については、一定の要件のもとに、損金算入が認められる場合があります。
それでは、資産の評価損について、その原則と特例をみてみましょう。
1.原 則
法人がその有する資産の評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合には、その減額した部分の金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しないというのが法人税の基本です。(法33@)
2.特 例
(1) 災害による著しい損傷により当該資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなつたことその他の政令で定める事実が生じた場合
法人の有する資産につき、災害による著しい損傷により当該資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなつたことその他の政令で定める事実(注)が生じた場合において、
その内国法人が当該資産の評価換えをして損金経理によりその帳簿価額を減額したときは、
その減額した部分の金額のうち、その評価換えの直前の当該資産の帳簿価額とその評価換えをした日の属する事業年度終了の時における当該資産の価額 (この場合の価額は、当該資産が使用収益されるものとしてその時において譲渡される場合に通常付される価額とされています。法基通9-1-3) との差額に達するまでの金額は、
その評価換えをした日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入します。(法33A)
災害等の場合の概要は上記のとおりですが、これだけではよく分からないので、施行令68条を見てみましょう。
(注)施行令に掲げる資産の評価損の計上ができる政令の事実は以下のとおりです。
次の各号に掲げる物損等の事実で、当該事実が生じたことにより当該資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなつたもの及び法的整理の事実(更生手続における評定が行われることに準ずる特別の事実をいい、これには例えば、民事再生法の規定による再生手続開始の決定があったことにより財産の価額の評定が行われる場合が該当するとされています。法基通9-1-3の3)をいいます。(法68@)
一 棚卸資産 次に掲げる事実
イ 当該資産が災害により著しく損傷したこと。
ロ 当該資産が著しく陳腐化したこと。
この場合の「当該資産が著しく陳腐化したこと」ですが、通達では以下のように説明しています。
棚卸資産そのものには物質的な欠陥がないにもかかわらず経済的な環境の変化に伴ってその価値が著しく減少し、その価額が今後回復しないと認められる状態にあることをいい、例えば商品について次のような事実が生じた場合がこれに該当します。〔法基通9-1-4〕
(1) 季節商品で売れ残ったものについて、今後通常の価額では販売することができないことが既往の実績その他の事情に照らして明らかであること。
(2) その商品と用途の面ではおおむね同様であるが、型式、性能、品質等が著しく異なる新製品が発売されたことにより、その商品につき今後通常の方法により販売することができないようになったこと。
ハ イ又はロに準ずる特別の事実
「イ又はロに準ずる特別の事実」には、例えば、、破損、型崩れ、たなざらし、品質変化等により通常の方法によって販売することができないようになったことが含まれます。〔法基通9-1-5〕
二 有価証券 次に掲げる事実
イ 企業支配株式以外の売買目的有価証券(取引所売買有価証券・店頭売買有価証券・その他価格公表有価証券)の価額が著しく低下したこと。
「有価証券の価額が著しく低下したこと」とは、当該有価証券の当該事業年度終了の時における価額がその時の帳簿価額のおおむね50%相当額を下回ることとなり、かつ、近い将来その価額の回復が見込まれないことをいいます。〔法基通9-1-7〕
ロ イの有価証券以外の有価証券について、その有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化したため、その価額が著しく低下したこと。
「有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化したこと」には、次に掲げる事実をいいます。
〔法基通9-1-9〕
(1) 当該有価証券を取得して相当の期間を経過した後に当該発行法人について次に掲げる事実が生じたこと。
イ 特別清算開始の命令があったこと。
ロ 破産手続開始の決定があったこと。
ハ 再生手続開始の決定があったこと。
ニ 更生手続開始の決定があったこと。
(2) 当該事業年度終了の日における当該有価証券の発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額が当該有価証券を取得した時の当該発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額に比しておおむね50%以上下回ることとなったこと。
上場有価証券等以外の株式につき資産の評価換えによる評価損の損金算入の規定を適用する場合の当該株式の価額は、次の区分に応じ、次によります。〔法基通9-1-13〕
(1) 売買実例のあるもの 当該事業年度終了の日前 6月間において売買の行われたもののうち適正と認められるものの価額
(2) 公開途上にある株式で、当該株式の上場に際して株式の公募又は売出しが行われるもの((1)に該当するものを除きます。) 金融商品取引所の内規によって行われる入札により決定される入札後の公募等の価格等を参酌して通常取引されると認められる価額
(3) 売買実例のないものでその株式を発行する法人と事業の種類、規模、収益の状況等が類似する他の法人の株式の価額があるもの((2)に該当するものを除きます。) 当該価額に比準して推定した価額
(4) (1)から(3)までに該当しないもの 当該事業年度終了の日又は同日に最も近い日におけるその株式の発行法人の事業年度終了の時における1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額
「財産評価基本通達」の《取引相場のない株式の評価》の例によって算定した価額によっているときは、課税上弊害がない限り、次によることを条件としてこれを認めることとされています。
〔法基通9-1-14〕
(1) 「中心的な同族株主」に該当するときは、当該発行会社は「小会社」に該当するものとしてその例によること。
(2) 当該株式の発行会社が土地(土地の上に存する権利を含む。)又は金融商品取引所に上場されている有価証券を有しているときは、「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」の計算に当たり、これらの資産については当該事業年度終了の時における価額によること。
(3) 財産評価基本通達「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」の計算に当たり、評価差額に対する法人税額等に相当する金額は控除しないこと。
ハ ロに準ずる特別の事実
三 固定資産 次に掲げる事実
イ 当該資産が災害により著しく損傷したこと。
ロ 当該資産が1年以上にわたり遊休状態にあること。
ハ 当該資産がその本来の用途に使用することができないため他の用途に使用されたこと。
ニ 当該資産の所在する場所の状況が著しく変化したこと。
ホ イからニまでに準ずる特別の事実
この場合の「イからニまでに準ずる特別の事実」には、例えば、法人の有する固定資産がやむを得ない事情によりその取得の時から1年以上事業の用に供されないため、当該固定資産の価額が低下したと認められることが含まれるとされています。〔法基通9-1-16〕
固定資産について評価損の計上ができない場合の例示
次のような事実に基づく固定資産の価額の低下による評価損は損金の額に算入できないことになります。〔法基通9-1-17〕
(1) 過度の使用又は修理の不十分等により当該固定資産が著しく損耗していること。
(2) 当該固定資産について償却を行わなかったため償却不足額が生じていること。
(3) 当該固定資産の取得価額がその取得の時における事情等により同種の資産の価額に比して高いこと。
(4) 機械及び装置が製造方法の急速な進歩等により旧式化していること。
四 繰延資産 次に掲げる事実
イ その繰延資産となる費用の支出の対象となつた固定資産につき前号イからニまでに掲げる事実が生じたこと。
ロ イに準ずる特別の事実
更生計画認可の決定や再生計画認可の決定があつた場合等の評価損については、次回の「2013.3.1債務者の税金対策 J資産の評価損の損金不算入等(その2)」に掲載します。
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