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債務者の税金対策 H期限切れ欠損金の活用(解散した場合



2012/12/1  菊 池 芳 平



 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越しの規定(法57)や、青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越しの規定(法58)は、いずれも要件に適格すると9年繰越控除が認められています。 

 これらのほかに期限切れの欠損金でも、会社の更生や再生、解散等で一定の場合に、損金算入が認められる場合があります。

 「更生手続き開始の決定があった場合」「再生手続開始の決定があつたことその他これに準ずる政令で定める事実が生じた場合」については前回以前に検討しましたので、 ここでは、法人が解散した場合で残余財産がないと見込まれる場合に、期限切れの欠損金の損金算入が認められる場合について検討することとします。

 解散の場合の期限切れ欠損金の損金算入の要件は以下のとおりです。

1.要件
(1) 内国法人が解散した場合において、残余財産がないと見込まれるときは、
(2) その清算中に終了する事業年度(前2項の規定の適用を受ける事業年度を除く。以下この項において「適用年度」という。)前の各事業年度において生じた欠損金額(連結事業年度において生じた第81条の18第1項に規定する個別欠損金額(当該連結事業年度に連結欠損金額が生じた場合には、当該連結欠損金額のうち当該内国法人に帰せられる金額を加算した金額)を含む。)を基礎として政令で定めるところにより計算した金額に相当する金額(当該相当する金額がこの項及び第62条の5第5項の規定を適用しないものとして計算した場合における当該適用年度の所得の金額を超える場合には、その超える部分の金額を控除した金額)は、
(3) 当該適用年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することができます。(法令59B )
(4) この規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書にこれらの規定により損金の額に算入される金額の計算に関する明細を記載した書類及び更生手続開始の決定があつたこと若しくは再生手続開始の決定があつたこと若しくは政令で定める事実が生じたことを証する書類又は残余財産がないと見込まれることを説明する書類その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用されます。(法令59C )
(5) 財務省令で定める書類の添付がない確定申告書、修正申告書又は更正請求書の提出があつた場合においても、その書類の添付がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、この規定を適用することができるとされています。(法令59D )

2.解散の場合の欠損金額の範囲(法令118)
 法第59条第3項(会社更生等による債務免除等があつた場合の欠損金の損金算入)に規定する欠損金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額は、第1号に掲げる金額から第2号に掲げる金額を控除した金額となります。
一 法第59条第3項に規定する適用年度(以下この条において「適用年度」という。)終了の時における前事業年度以前の事業年度から繰り越された欠損金額(同項に規定する個別欠損金額を含む。)の合計額(当該適用年度終了の時における資本金等の額が零以下である場合には、当該欠損金額の合計額から当該資本金等の額を減算した金額)

二 法第57条第1項(青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し)又は第58条第1項(青色申告書を提出しなかつた事業年度の災害による損失金の繰越し)の規定により適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される欠損金額
前事業年度以前の事業年度から繰り越された欠損金額の合計額
 令第118条《解散の場合の欠損金額の範囲》に規定する「前事業年度以前の事業年度から繰り越された欠損金額(同項に規定する個別欠損金額を含む。)の合計額」とは、当該事業年度の確定申告書に添付する法人税申告書別表5(1)の「利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書」に期首現在利益積立金額の合計額として記載されるべき金額で、当該金額が負(マイナス)である場合の当該金額によります。(法基通12-3-2)

3.残余財産がないと見込まれるかどうかの判定の時期
 法第59条第3項《解散した場合の期限切れ欠損金額の損金算入》に規定する「残余財産がないと見込まれる」かどうかの判定は、法人の清算中に終了する各事業年度終了の時の現況によるとされています。(法基通12-3-7)

4.残余財産がないと見込まれることの意義
 解散した法人が当該事業年度終了の時において債務超過の状態にあるときは、法第59条第3項《解散した場合の期限切れ欠損金額の損金算入》に規定する「残余財産がないと見込まれるとき」に該当するとされています。(法基通12-3-8)

5.残余財産がないと見込まれることを説明する書類
 規則第26条の6第3号《会社更生等により債務の免除を受けた金額等の明細等に関する書類》に定める「残余財産がないと見込まれることを説明する書類」とは、通達によって、法人の清算中に終了する各事業年度終了の時の実態貸借対照表(当該法人の有する資産及び負債の価額により作成される貸借対照表をいいます。)が該当するとされています。(法基通12-3-9)

6.実態貸借対照表を作成する場合の資産の価額
 法人が実態貸借対照表を作成する場合の資産の価額は、当該事業年度終了の時における処分価格によります。
 しかし当該法人の解散が事業譲渡等を前提としたもので、当該法人の資産が継続して他の法人の事業の用に供される見込みであるときには、当該資産が使用収益されるものとして当該事業年度終了の時において譲渡される場合に通常付される価額によります。(法基通12-3-9(注))



 

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