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債務者の税金対策 G期限切れ欠損金の活用(民事再生等の場合




2012/11/1  菊 池 芳 平



 経済的に窮境にある債務者について、民事再生法の規定による再生手続開始の決定があつたことその他これに準ずる政令で定める事実があると再生計画による権利の変更が行われます。

 しかし権利の変更により発生した債務免除等の益金に課税されると、会社再建等に影響がでてきます。

 そこで、法人税法では、一定の要件のもとに債務免除等による利益の合計額に達するまで期限切れ欠損金の損金算入を認めています。

 民事再生等の場合の期限切れ欠損金の損金算入の要件は以下のとおりです。

1.要 件
(1) 内国法人について再生手続開始の決定があつたことその他これに準ずる政令で定める事実(以下 2 の内容)が生じた場合において、
(2) その内国法人が次の一定の場合に該当するときは、
(3) その該当することとなつた日の属する事業年度(第3号に掲げる場合に該当する場合には、その該当することとなつた事業年度。以下「適用年度」といいます。) 前の各事業年度において生じた欠損金額で政令で定めるものに相当する金額のうち
(4) 次に掲げる債務免除等による利益の合計額(当該合計額がこの項及び第62条の5第5項(現物分配による資産の譲渡)(第3号に掲げる場合に該当する場合には、第57条第1項(青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し)及び前条第1項、この項並びに第62条の5第5項)の規定を適用しないものとして計算した場合における当該適用年度の所得の金額を超える場合には、その超える部分の金額を控除した金額) に達するまでの金額は、
(5) 当該適用年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することができます。(法59A)
一 これらの事実の生じた時においてその内国法人に対し政令で定める債権を有する者(当該内国法人との間に連結完全支配関係がある連結法人を除く。) から当該債権につき債務の免除を受けた場合(当該債権が債務の免除以外の事由により消滅した場合でその消滅した債務に係る利益の額が生ずるときを含む。) 
・・・・その債務の免除を受けた金額(当該利益の額を含みます。)

二 これらの事実が生じたことに伴いその内国法人の役員等から金銭その他の資産の贈与を受けた場合
 ・・・・その贈与を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額

三 第25条第3項又は第33条第4項の規定の適用を受ける場合
・・・・ 第25条第3項の規定により当該適用年度の所得の金額の計算上益金の額に算入される金額から第33条第4項の規定により当該適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額を減算した金額

(6) この規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書にこれらの規定により損金の額に算入される金額の計算に関する明細を記載した書類及び更生手続開始の決定があつたこと若しくは再生手続開始の決定があつたこと若しくは政令で定める事実が生じたことを証する書類又は残余財産がないと見込まれることを説明する書類その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用されます。(法令59C )
(7) 財務省令で定める書類の添付がない確定申告書、修正申告書又は更正請求書の提出があつた場合においても、その書類の添付がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、この規定を適用することができるとされています。(法令59D )

2.再生手続開始の決定に準ずる事実等とは
 法第59条第2項(会社更生等による債務免除等があつた場合の欠損金の損金算入)に規定する政令で定める事実は、次の各号に掲げる事実をいい、同項第1号に規定する政令で定める債権は、それぞれ当該各号に定める債権をいいます。(法令117)
一 再生手続開始の決定があつたこと
 民事再生法第84条(再生債権となる請求権) に規定する再生債権(同法に規定する共益債権及び同法第122条第1項(一般優先債権)に規定する一般優先債権で、その再生手続開始前の原因に基づいて生じたものを含みます。)

二 内国法人について特別清算開始の命令があつたこと
 その特別清算開始前の原因に基づいて生じた債権

三 内国法人について破産手続開始の決定があつたこと
 破産法第2条第5項(定義)に規定する破産債権 (同条第7項に規定する財団債権でその破産手続開始前の原因に基づいて生じたものを含みます。)

四 第24条の2第1項(再生計画認可の決定に準ずる事実等) に規定する事実
 当該事実の発生前の原因に基づいて生じた債権

五 前各号に掲げる事実に準ずる事実(更生手続開始の決定があつたことを除きます。
 当該事実の発生前の原因に基づいて生じた債権

再生手続開始の決定に準ずる事実等とは
令第117条第5号《再生手続開始の決定に準ずる事実等》に規定する「前各号に掲げる事実に準ずる事実」とは、次に掲げる事実をいいます。(法基通12-3-1)

(1) 同条第1号から第4号までに掲げる事実以外において法律の定める手続による資産の整理があったこと。

(2) 主務官庁の指示に基づき再建整備のための一連の手続を織り込んだ一定の計画を作成し、これに従って行う資産の整理があったこと。

(3) (1)及び(2)以外の資産の整理で、例えば、親子会社間において親会社が子会社に対して有する債権を単に免除するというようなものでなく、債務の免除等が多数の債権者によって協議の上決められる等その決定について恣意性がなく、かつ、その内容に合理性があると認められる資産の整理があったこと。





3.民事再生等の場合の欠損金額の範囲
 法第59条第2項(会社更生等による債務免除等があつた場合の欠損金の損金算入) に規定する欠損金額で政令で定めるものは、第1号に掲げる金額から第2号に掲げる金額を控除した金額(同項第3号に掲げる場合に該当する場合には、第1号に掲げる金額) とします。(法令117条の2)
一 法第59条第2項に規定する適用年度(次号において「適用年度」という。) 終了の時における前事業年度以前の事業年度から繰り越された欠損金額(同項に規定する個別欠損金額を含む。) の合計額

二 法第57条第1項(青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し)又は第58条第1項(青色申告書を提出しなかつた事業年度の災害による損失金の繰越し) の規定により適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される欠損金額

4.前事業年度以前の事業年度から繰り越された欠損金額の合計額
 令第117条の2第1号《民事再生等の場合の欠損金額の範囲》に規定する「前事業年度以前の事業年度から繰り越された欠損金額(同項に規定する個別欠損金額を含む。)の合計額」とは、当該事業年度の確定申告書に添付する法人税申告書別表5(1)の「利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書」に期首現在利益積立金額の合計額として記載されるべき金額で、当該金額が負(マイナス)である場合の当該金額によります。(法基通12-3-2)

5.債務免除等があった場合の債務免除等の金額
 法第59条第2項《会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入》に規定する「当該各号に定める金額の合計額」を計算する場合において、同項第3号に定める金額が負(マイナス)であるときは、当該合計額は第1号及び第2号の正(プラス)の金額と第3号の負(マイナス)の金額とを通算した金額となります。(法基通12-3-4)

6.債務の免除以外の事由による消滅の意義
 法第59条
第1項第1号又は第2項第1号《会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入》に規定する「当該債権が債務の免除以外の事由により消滅した場合」とは、次に掲げるような場合がこれに該当するとされています。(法基通12-3-6)
(1) 会社更生法又は金融機関等の更生手続等の更生手続きの特例等に関する法律(更生特例法)の規定により、法第59条第1項第1号に規定する債権を有する者が、更生計画の定めに従い、同項に規定する内国法人に対して募集株式若しくは募集新株予約権の払込金額又は出資額若しくは基金の拠出の額の払込みをしたものとみなされた場合
(2) 会社更生法又は更生特例法の規定により、法第59条第1項に規定する内国法人が、更生計画の定めに従い、同項第1号に規定する債権を有する者に対して当該債権の消滅と引換えに、株式若しくは新株予約権の発行又は出資の受入れ若しくは基金の拠出の割当てをした場合


(3) 法第59条第2項に規定する内国法人が、同項第1号に規定する債権を有する者から当該債権の現物出資を受けることにより、当該債権を有する者に対して募集株式又は募集新株予約権を発行した場合

 
 (注)上記(3)の債権の現物出資は、一般にDES(Debt Equity Swap)と言われています。 Debt(債務)とEquity(資本)をSwap(交換)することで、債務の株式化をはかり財務の再構築を図ろうとする場合に生じた、混同(民法520)による債権の消滅にともなう債務消滅益についても法59の要件を満たす場合には、期限切れ欠損金の損金算入が認められています。

 

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