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債務者の税金対策 E青色欠損金の繰越し控除
2012/9/1 菊 池 芳 平
その事業年度の損金の額がその事業年度の益金の額を超える場合のその超える部分の金額を欠損金額といいます。(法2@十九)
この欠損金額のうち、青色申告書である確定申告書を提出し、かつ、その後において連続して確定申告書を提出している場合は、単年度課税の例外として一定の期間これを繰り越し、所得の生じた事業年度の計算上損金の額に算入することができるとされています。
今回は、債務者企業の税金対策として、この青色欠損金について検討します。
1.概 要 (法57@)
法人税法では損金の額が益金の額を超える場合の青色欠損金額について、以下の要件のもとに次のような繰越控除を認めています。
@ 法人の各事業年度開始の日前9年以内(注1)に開始した事業年度において生じた欠損金額がある場合には、当該欠損金額に相当する金額は、当該各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することができます。
A ただし、中小法人等(次の2.要件Bに掲げる中小法人等をいいます。)以外の法人は、当該欠損金額に相当する金額が、当該各事業年度の所得の金額の100分の80に相当する金額を超える場合は、その超える部分の金額については、この限りでないとされています。従って中小法人等以外の法人は各事業年度の所得の金額の80%が限度となります。(注2)
(注1) 9年の延長規定は平成20年4月1日以後に終了した事業年度において生じた欠損金額について適用され、同日前に終了した事業年度において生じた欠損金額については、なお従前の例の7年になります。(平23.12改正法附則14@)
(注2) 80%制限は平成24年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。(平23.12改正法附則10)
2.要 件
@ この規定は、当該内国法人が欠損金額の生じた事業年度について青色申告書である確定申告書を提出し、かつ、その後において連続して確定申告書を提出している場合であつて欠損金額の生じた事業年度に係る帳簿書類を財務省令で定めるところにより保存している場合に限り、適用されます。(法57I)
(注) この帳簿書類保存要件は、欠損金の繰越控除のために別途帳簿書類を作成・保存する必要はなく、青色申告法人や白色申告法人又は連結法人がそれぞれ義務として作成し7年間保存している帳簿書類を、7年間ではなく9年間保存することが要件とされています。(平成24年度改正税法のすべてP128)
A 上記1.概要@の「各事業年度の所得の金額」とは、青色申告書を提出した事業年度の欠損金の損金算入の規定(法57@)を適用せず、かつ民事再生等による債務免除等があつた場合の欠損金の損金算入の規定(法59A(同項第3号に掲げる場合に該当する場合を除きます。) とB)、及び法62条の5D(残余財産の確定事業年度に係る事業税の額の損金算入規定)の規定を適用しないものとして計算した場合の所得の金額をいい、「100分の80に相当する金額」とは、当該欠損金額の生じた事業年度前の事業年度において生じた欠損金額に相当する金額で第57条第1項(青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し)又は第58条第1項(青色申告書を提出しなかつた事業年度の災害による損失金の繰越し)の規定により当該各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されるものがある場合には、当該損金の額に算入される金額を控除した金額をいいます。(法57@ただし書き)
B 上記1.概要Aの「ただし書」の規定の適用については、各事業年度終了の時において次に掲げる中小法人等については、同項ただし書中「所得の金額の100分の80に相当する金額」とあるのは、「所得の金額」とします。(法57J)
一 普通法人のうち、資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下であるもの(法66E二又は三(各事業年度の所得に対する法人税の税率)に掲げる法人に該当するものを除きます。)又は資本若しくは出資を有しないもの(保険業法に規定する相互会社を除きます。)
二 公益法人等又は協同組合等
三 人格のない社団等
従って中小法人等については所得制限がないことになりますが、資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下であるもの又は資本若しくは出資を有しないものでも、次に掲げる法人に該当するものは除かれるので注意が必要です。
イ 次の一の大法人による完全支配関係がある法人
@ 資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人
A 相互会社及び外国相互会社
B 受託法人
ロ 完全支配関係がある複数の大法人に発行済株式等の全部を保有されている法人
C 上記の内国法人が第59条(会社更生等による債務免除等があつた場合の欠損金の損金算入)第1項から第3項までの規定の適用を受ける場合には、当該内国法人の適用年度以後の各事業年度(同条第2項(同項第3号に掲げる場合に該当する場合を除く。)又は同条第3項の規定の適用を受ける場合にあつては、適用年度後の各事業年度)における法57条第1項の規定の適用については、同項に規定する欠損金額のうち法59条第1項から第3項までの規定により適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額から成る部分の金額として政令で定める金額はないものとされます。(法57D)
(注) Cに掲げた法57条D項の条文の内容は、法59条の期限切れ欠損金の損金算入額のうち青色欠損金額から成る部分の金額は青色欠損金額から切り捨てるという趣旨です。
このことは、欠損金の控除限度額が所得の金額の80%相当額とされたことに伴い、青色欠損金を残したまま期限切れ欠損金を控除することになってしまうことや、期限切れ欠損金の控除後に青色欠損金が全額控除できずに所得が発生してしまうといった問題が生じないようにするための調整とされています。
(平成24年度改正税法のすべてP125)
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