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債務者の税金対策 D欠損金の繰戻しによる還付



2012/8/1  菊 池 芳 平

  

 
 欠損金の繰戻しによる還付の制度は、たとえば当期が赤字、前期が黒字で法人税を納付したような場合は、一定の要件下で、前期に納めた法人税額の一定割合の取り戻しができるという制度です。
(会社の税金の計算は単年度課税が原則とされていますが、この制度は例外となります。)

 債務者企業、とりわけ再生手続の開始が決定した企業やこれに準ずる企業はこの規定が重要となってきます。

1.欠損金の繰戻しによる還付のポイント
@.還付請求書や青色申告書の提出要件が定められていること。
A.税務署長による必要事項の調査が行われること。
B.適用を受けられる対象法人が中小法人等に限定されていること。
C.請求金額が限度とされること。
D.通常の場合と解散等(注)の場合では要件が異なること。
   

(注) 解散等の場合とは、
  1. 解散(適格合併による解散を除きます。)
  2. 事業の全部の譲渡
  3. 更生手続の開始(更生手続の開始の申立て(会社更生法第234条《更生手続の終了事由》等に規定する更生手続開始の申立てを棄却する決定があった場合のその申立てを除きます。)があったことをいうものとします)
  4. 事業の全部の相当期間の休止又は重要部分の譲渡で、これらの事実が生じたことにより同項に規定する欠損金額につき法第57条第1項(青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し)の規定の適用を受けることが困難となると認められるもの
  5. 再生手続開始の決定
の事実をいいます。 (法80C、令154の3、法基通17-2-3)


2.適用対象法人 (措法66の13・法66E二、三)
次に掲げる中小法人等が適用対象になります。

 (注) 従って資本金5億円以上の大法人や、資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下の法人でも法人税法第66条第6項第2号又は第3号に掲げるその大法人と完全支配関係がある普通法人は不適用となります。
 ただし、清算中に終了する事業年度及び法人税法第80条第4項の規定に該当する場合の同法第80条第4項に規定する事業年度の欠損金額については、この限りでないとされています。
 なお、この規定(措法66の13)は、平成4年4月1日から平成26年3月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額について適用されます。

 (一) 法人税法第2条第9号に規定する普通法人のうち、当該事業年度終了の時において資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下であるもの(当該事業年度終了の時において同法第66条第6項第2号又は第3号に掲げる法人に該当するものを除きます。)又は資本若しくは出資を有しないもの(保険業法に規定する相互会社及びこれに準ずるものとして政令で定めるものを除きます。)
 (二) 公益法人等(法人税法第2条第6号に規定する公益法人等をいいます。以下同じです。)又は協同組合等(同条第7号に規定する協同組合等をいいます。)
 (三) 法人税法以外の法律によつて公益法人等とみなされているもので政令で定めるもの
 (四) 人格のない社団等

3.欠損金の繰戻しによる還付金額は以下のように計算されます。(法80@)

 還付所得事業年度 (注3)の法人税額    欠損事業年度(注1)の欠損金額(注2)    還付金額 
 ×      
 =
   還付所得事業年度の所得金額  
(注1)欠損事業年度とは、確定申告書を提出する事業年度において生じた欠損金額がある場合の当該欠損金額に係る事業年度をいいます。
(注2)欠損金額とは、各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額が当該事業年度の益金の額を超える場合におけるその超える部分の金額をいいます。(法2@十九)
(注3)還付所得事業年度とは、欠損事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度をいいます。
法人税額は附帯税の額を除くものとし、第68条から第70条の2まで(税額控除)の規定により控除された金額がある場合には、当該金額を加算した金額とします。)


4.還付要件

 A 通常の場合の還付要件 (解散等の場合以外)(法80@B
 1 その法人が還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度までの各事業年度について連続して青色申告書である確定申告書を提出している場合で、欠損事業年度の青色申告書である確定申告書をその提出期限までに提出していること(税務署長においてやむを得ない事情があると認める場合には、当該申告書をその提出期限後に提出した場合を含みます。)(法80B)

 2.欠損事業年度に青色申告書である確定申告書の提出と同時に、その還付を受けようとする法人税の額、その計算の基礎その他財務省令で定める事項を記載した還付請求書を納税地の所轄税務署長に提出すること。(法80@)

 3.欠損事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度の所得に対する法人税の額に、当該いずれかの事業年度(還付所得事業年度)の所得の金額のうちに占める欠損事業年度の欠損金額(この規定により他の還付所得事業年度の所得に対する法人税の額につき還付を受ける金額の計算の基礎とするものを除きます。以下同じです)に相当する金額の割合を乗じて計算した金額に相当する法人税の還付を請求することができます。(法80@)

 B 解散等の場合の提出要件(法80C)
 1.還付所得事業年度から欠損事業年度までの各事業年度について連続して青色申告書である確定申告書を提出していること。

 2.当該事実が生じた日以後1年以内に、その還付を受けようとする法人税の額、その計算の基礎その他財務省令で定める事項を記載した還付請求書を納税地の所轄税務署長に提出すること。

 3.解散等の場合は上記Aの通常の場合と異なって、その解散等の事実が生じた日前1年以内に終了したいずれかの事業年度又は同日の属する事業年度を欠損事業年度とし、その欠損事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度を還付事業年度として還付所得事業年度の所得に対する法人税の額に還付所得事業年度の所得の金額のうちに占める欠損事業年度の欠損金額に相当する金額の割合を乗じて計算した金額に相当する法人税の還付を請求することができます。


 

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