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債務者の税金対策 C一般的な納税の猶予




2012/7/1  菊 池 芳 平 


1.一般的な通常の納税の猶予(国通46A)

 国税通則法(以下通則法といいます)46条A項の一般的な納税の猶予は担保の提供、分割納付、一時納付困難の納付能力調査の点で@項の猶予と異なっています。
 この条項は、債務者に限らず昨今の経済環境から今後遭遇する場面も多いと考えられるので留意する必要があります。

@.要 件 
  
通則法に定める一般的な納税の猶予は
    イ) 下記に掲げる災害や事業廃止等の一定の事実があり
一、 納税者がその財産につき、震災、風水害、落雷、火災その他の災害を受け、
    又は盗難にかかつたこと。
二、 納税者又はその者と生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したこと。
三、 納税者がその事業を廃止し、又は休止したこと。
四、 納税者がその事業につき著しい損失を受けたこと。
五、 前各号の一に該当する事実に類する事実があつたこと。
ロ) その事実に基づき、国税を一時に納付することができないことが認められ、
ハ) かつ納税者の申請があった場合
その納付することができないと認められる金額を限度として1年以内の期間を限り、その納税を猶予が認められものです。(国通46A)

 その納付することができないと認められる金額を限度としてと規定されていることから、46条A項の猶予は@項の猶予と異なって納税者の納付能力の調査が行われることになります。

A.生計を一にするとは(猶予通達4章9)
 納税者と有無相助けて日常生活の資を共通にしていることをいい、納税者がその親族と起居をともにしていない場合においても、常に生活費、学資金、療養費等を支出して扶養しているときが含まれます。なお、同一家屋に起居していても、互いに独立し、日常生活の資を共通にしていない親族は、含まれません。

B.親族とは(猶予通達4章10)
 民法第725条各号(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族)に掲げる者をいいます。婚姻の届出をしていなくても事実上婚姻関係と同様の事情にある者は、配偶者と同様に取り扱うこととされています。

C.事業を廃止し、又は休止したとは(猶予通達4章11)
 法令の規定等やむを得ない理由により、事業を廃止(転業したものを含む。)または休止したことをいうものとされています。

D.前各号の一に該当する事実に類する事実(猶予通達4章12
 前各号の一に該当する事実に類する事実とは、おおむね次に掲げる事実をいうとされています。
(1) 第1号および第2号に類するもの
イ 詐欺、横領等により財産を喪失したこと。
ロ 交通事故の損害賠償(便用者責任による場合を含む。)をしたこと。
ハ 公害の損害賠償をしたこと。
ニ 納税者の取引先等である債務者について、おおむね次に掲げる理由が生じたため、その債務者に対する売掛債権等の回収が不能または著しく困難と認められること。
(イ) 居所不明または無財産になったこと。
(ロ) 事業の不振または失敗により休廃業に至ったこと。
(ハ) 企業担保権の実行手続の開始決定があったこと。
(ニ) 破産の宣告を受けたこと。
(ホ) 特別清算の開始決定があったこと。
(ヘ) 法律の定める整理手続によらないが、債権者集会の協議による債権整理の決定があったこと。
(ト) 手形交換所において取引の停止処分を受けたこと。
(チ) 災害、盗難、詐欺、横領により財産の大部分の喪失があったこと。
(リ) 会社更生手続の開始があったこと。
(ヌ) 会社の整理の開始があったこと。
(ル) 和議の開始があったこと。
 ホ 納税者と生計を一にする親族以外の者で、納税者の親族その他納税者の親族と同視できる特殊の関係にある者が、病気にかかり、または負傷したこと。

(2) 第3号および第4号に類するもの
イ 納税者の経営する事業に労働争議があり、事業を継続でさなかったこと
ロ 下請企業である納税者が、親会社からの発注の減少等による影響を受けたこと。
ハ 納税者がやむを得ない理由により著しい損失(事業に関するものを除く。)を受けたこと。
E.担保の提供、分割納付(国通46CD)
 納税の猶予をする場合には、その分割した金額ごとに猶予期間を定めることできることになっています。
 また、その猶予に係る金額に相当する担保を提供する必要があります。(その猶予に係る税額が50万円以下である場合又は担保を徴することができない特別の事情がある場合を除きます。)


2.延滞税の免除(国通63@)
  災害等による納税の猶予をした場合には、その猶予をした国税に係る延滞税のうち、その災害等による納税の猶予をした期間に対応する部分の金額に相当する金額は、免除することとされています。(46条1項若しくは2項1号、2号若しくは同項1号又は2号に該当する事実に類する5号に限ります。)

 事業の廃止等による納税の猶予をした場合には、その事業の廃止等による納税の猶予をした期間 (当該国税の納期限の翌日から2月を経過する日後の期間に限る。) に対応する部分の金額の2分の1に相当する金額は、免除するとされています。(46条2項3号、4号若しくは同項3号又は4号に該当する事実に類する5号に限ります。)

国税通則法

第46条 納税の猶予の要件等
2 税務署長等は、次の各号の一に該当する事実がある場合(前項の規定の適用を受ける場合を除く。)において、その該当する事実に基づき、納税者がその国税を一時に納付することができないと認められるときは、その納付することができないと認められる金額を限度として、納税者の申請に基づき、1年以内の期間を限り、その納税を猶予することができる。前項の規定による納税の猶予をした場合において、同項の災害を受けたことにより、その猶予期間内に猶予をした金額を納付することができないと認めるときも、また同様とする。
一 納税者がその財産につき、震災、風水害、落雷、火災その他の災害を受け、又は盗難にかかつたこと。
二 納税者又はその者と生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したこと。
三 納税者がその事業を廃止し、又は休止したこと。
四 納税者がその事業につき著しい損失を受けたこと。
五 前各号の一に該当する事実に類する事実があつたこと。
3 税務署長等は、次の各号に掲げる国税(延納に係る国税を除く。)の納税者につき、当該各号に掲げる税額に相当する国税を一時に納付することができない理由があると認められる場合には、その納付することができないと認められる金額を限度として、その国税の納期限内にされたその者の申請(税務署長等においてやむを得ない理由があると認める場合には、その国税の納期限後にされた申請を含む。)に基づき、その納期限から1年以内の期間を限り、その納税を猶予することができる。
一 申告納税方式による国税 (その附帯税を含む。) その法定申告期限から1年を経過した日以後に納付すべき税額が確定した場合における当該確定した部分の税額
二 賦課課税方式による国税(その延滞税を含み、第69条(加算税の税目)に規定する加算税及び過怠税を除く。) その課税標準申告書の提出期限(当該申告書の提出を要しない国税については、その納税義務の成立の日)から1年を経過した日以後に納付すべき税額が確定した場合における当該確定した部分の税額
三 源泉徴収による国税(その附帯税を含む。) その法定納期限から1年を経過した日以後に納税告知書の送達があつた場合における当該告知書に記載された納付すべき税額
4 前2項の規定による納税の猶予をする場合には、その猶予に係る金額を適宜分割し、その分割した金額ごとに猶予期間を定めることを妨げない。
5 税務署長等は、第2項又は第3項の規定による納税の猶予をする場合には、その猶予に係る金額に相当する担保を徴さなければならない。ただし、その猶予に係る税額が50万円以下である場合又は担保を徴することができない特別の事情がある場合は、この限りでない。
6 税務署長等は、前項の規定により担保を徴する場合において、その猶予に係る国税につき滞納処分により差し押えた財産があるときは、その担保の額は、その猶予をする金額からその財産の価額を控除した額を限度とする。
7 税務署長等は、第2項又は第3項の規定により納税の猶予をした場合において、その猶予をした期間内にその猶予をした金額を納付することができないやむを得ない理由があると認めるときは、納税者の申請に基づき、その期間を延長することができる。ただし、その期間は、既にその者につきこれらの規定により納税の猶予をした期間とあわせて2年をこえることができない。
 


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