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債務者の税金対策 B災害等の相当損失による納税の猶予




2012/6/1  菊 池 芳 平 



 事業を経営していると予期せぬ災害や事故に遭遇します。 
 この災害や事故等とは、国税通則法(以下通則法といいます)46条の震災、風水害、落雷、火災その他これらに類する災害、病気または負傷にかかったこと、事業の廃止、又は休止、事業の著しい損失等をいいます。(国通46@A)(猶予通達4章1)

 納税の猶予は、このような場合に税金の納付を猶予することが出来る制度ですが、これには
   1.災害等により相当な損失を受けた場合の納税の猶予(国通46@)
   2.一般的な納税の猶予(国通46AB)
 があります。
 いずれも一定の要件に該当することが必要で、納税者の申請を要件とします。

今回は、このうちの災害等により相当な損失を受けた場合の納税の猶予について検討することとします。
(一般的な納税の猶予については次回に掲載します)




1.災害等により相当な損失を受けた場合の納税の猶予(国通46@)


@.要 件 (国通46@)
 納税者が震災、風水害、落雷、火災その他これらに類する災害によりその財産につき相当な損失を受けた場合において、

1.その者がその損失を受けた日以後1年以内に納付すべき国税で、
2.その災害のやんだ日以前に納税義務の成立した国税で、
3.納期限がその損失を受けた日以後に到来するもののうち、
4.その申請の日以前に納付すべき税額の確定したものがあるときは、
5.その災害のやんだ日から2月以内にされたその者の申請に基づき、
6.その納期限から1年以内の期間を限り、その国税の全部又は一部の納税を猶予することができること

とされています。

 災害のやんだ日以前に納税義務の成立した国税で、納期限がその損失を受けた日以後に到来するもののうち、その申請の日以前に納付すべき税額の確定したものとなっているので、

 たとえば所得税の場合は翌年の1月1日から3月15日までの間の被災であれば前年の所得に対する所得税が対象になると考えられます。

A.納税義務の成立と納付すべき税額の確定
 納税義務の成立した国税は、次に掲げる時に成立するものとされています。(国通15A)
   所得税 暦年の終了の時
   源泉徴収による所得税 源泉徴収をすべきものとされている所得の支払の時
   法人税 事業年度の終了の時
   相続税 相続又は遺贈による財産の取得の時
   贈与税 贈与による財産の取得の時
   消費税等 課税資産の譲渡等をした時

 納付すべき税額は、以下の方式の手続きに従い確定します(国通16@)
   申告納税方式 納税者のする申告により確定
   賦課課税方式 税務署長により確定

B.猶予される金額
 納税者の申請したその国税の全部又は一部について納税の猶予することができるとされています。

C.その他これらに類する災害(猶予通達4章1)
 その他これらに類する災害とはおおむね次の事実をいうとされています。
 (1) 地すべり、噴火、干害、冷害、海流の激変その他の自然現象の異変による災害
 (2) 火薬類の爆発、ガス爆発、鉱害、交通事故、天然ガスの採取等による地盤沈下その他の人為による異 常な災害
 (3) 病虫害、鳥獣害その他の生物による異常な災害をいいます。

D.相当な損失とは(猶予通達4章2
 相当な損失とは、災害による損失の額が納税者の全積極財産の価額に占める割合 (損失の割合) がおおむね20%以上の場合をいいます。なお、保険金または損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされたまたは補てんされるべき金額は、上記の損失の額から控除することとされています。

E.納税の猶予期間は(猶予通達4章5)
 納税者の納付能力を個別に調査することなく、被害財産の種類と損失の状況のにより、原則として以下の基準により1年以内の猶予期間が決まるとされています。
     全損(損失の割合が50%をこえる場合)      1年
     半損(損失の割合が20%から50%までの場合)  8月(原則) 

 納税の猶予期間内に、猶予した金額を納付することができない場合は、さらに新たな申請書を提出して、通則法46条2項の一般の場合の納税猶予を求めることが出来ます。


2.延滞税の免除(国通63@)
 通則法46条1項若しくは2項1号、2号若しくは5号(同項1号又は2号に該当する事実に類する事実に係る部分に限ります。) の災害等による納税の猶予をした場合には、その猶予をした国税に係る延滞税のうち、その災害等による納税の猶予をした期間に対応する部分の金額に相当する金額は、免除することとされています。

国税通則法
 
第46条 納税の猶予の要件等
税務署長(第43条第1項ただし書、第3項若しくは第4項又は第44条第1項(国税の徴収の所轄庁)の規定により税関長又は国税局長が国税の徴収を行う場合には、その税関長又は国税局長。以下この章において「税務署長等」という。)は、震災、風水害、落雷、火災その他これらに類する災害により納税者がその財産につき相当な損失を受けた場合において、その者がその損失を受けた日以後1年以内に納付すべき国税で次に掲げるものがあるときは、政令で定めるところにより、その災害のやんだ日から2月以内にされたその者の申請に基づき、その納期限(納税の告知がされていない源泉徴収による国税については、その法定納期限)から1年以内の期間(第3号に掲げる国税については、政令で定める期間)を限り、その国税の全部又は一部の納税を猶予することができる。

一 次に掲げる国税の区分に応じ、それぞれ次に定める日以前に納税義務の成立した国税(消費税及び政令で定めるものを除く。)で、納期限(納税の告知がされていない源泉徴収による国税については、その法定納期限)がその損失を受けた日以後に到来するもののうち、その申請の日以前に納付すべき税額の確定したもの
イ 源泉徴収による国税並びに申告納税方式による消費税等(保税地域からの引取りに係るものにあつては、石油石炭税法(昭和53年法律第25号)第17条第3項(引取りに係る原油等についての石油石炭税の納付)の規定により納付すべき石油石炭税に限る。)、航空機燃料税、電源開発促進税及び印紙税 その災害のやんだ日の属する月の末日
ロ イに掲げる国税以外の国税 その災害のやんだ日
二 その災害のやんだ日以前に課税期間が経過した課税資産の譲渡等に係る消費税でその納期限がその損失を受けた日以後に到来するもののうちその申請の日以前に納付すべき税額の確定したもの
三 予定納税に係る所得税その他政令で定める国税でその納期限がその損失を受けた日以後に到来するもの



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