HOME   事務所概要  商品サービス  料 金  税金を調べる  路線価を調べる  金融庁  中小企業庁  経産省






債権者の税金対策 E形式基準による貸倒引当金



2012/1/1  菊 池 芳 平


はじめに
 形式基準による貸倒引当金は、個別評価金銭債権に係る債務者につき、いわゆる倒産4法(会社更生法、民事再生法、破産法、会社法の特別清算)等によってそれぞれ開始の申立て等の事由があった場合に、法律的に債権の消滅が確定していない段階でも、債務者企業の状態に着目して、一定の要件のもとにその債務者企業の個別評価金銭債権の額の100分の50に相当する金額の損金経理による損金算入を認めるものです。

 開始の申立ては、一般に債務者企業が支払不能又は債務超過 (債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態をいう) 等の状態にあるときに認められています。

 法人税法施行令第96条 貸倒引当金勘定への繰入限度額
法第52条第1項(貸倒引当金)に規定する政令で定める場合は、次の各号に掲げる場合とし、同項に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、当該各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。

一 略
二 略

三 当該内国法人が当該事業年度終了の時において有する個別評価金銭債権に係る債務者につき次に掲げる事由が生じている場合(第1号に掲げる場合及び前号に定める金額を法第52条第1項に規定する個別貸倒引当金繰入限度額として同項の規定の適用を受けた場合を除く。)当該個別評価金銭債権の額(当該個別評価金銭債権の額のうち、当該債務者から受け入れた金額があるため実質的に債権とみられない部分の金額及び担保権の実行、金融機関又は保証機関による保証債務の履行その他により取立て等の見込みがあると認められる部分の金額を除く。)の100分の50に相当する金額
イ 更生手続開始の申立て
ロ 再生手続開始の申立て
ハ 破産手続開始の申立て
ニ 特別清算開始の申立て
ホ イからニまでに掲げる事由に準ずるものとして財務省令で定める事由

四 略


実質的に債権とみられない部分の金額とは
 上記3号にいう「当該個別評価金銭債権の額のうち、当該債務者から受け入れた金額があるため実質的に債権とみられない部分の金額」とは、次に掲げるような金額がこれに該当するとされています。(法基通11-2-9 )

(1) 同一人に対する売掛金又は受取手形と買掛金がある場合のその売掛金又は受取手形の金額のうち買掛金の金額に相 当する金額
(2) 同一人に対する売掛金又は受取手形と買掛金がある場合において、当該買掛金の支払のために他から取得した受取手形を裏書譲渡したときのその売掛金又は受取手形の金額のうち当該裏書譲渡した手形(支払期日の到来していないものに限る。)の金額に相当する金額
(3) 同一人に対する売掛金とその者から受け入れた営業に係る保証金がある場合のその売掛金の額のうち保証金の額に相当する金額
(4) 同一人に対する売掛金とその者から受け入れた借入金がある場合のその売掛金の額のうち借入金の額に相当する金額
(5) 同一人に対する完成工事の未収金とその者から受け入れた未成工事に対する受入金がある場合のその未収金の額のうち受入金の額に相当する金額
(6) 同一人に対する貸付金と買掛金がある場合のその貸付金の額のうち買掛金の額に相当する金額
(7) 使用人に対する貸付金とその使用人から受け入れた預り金がある場合のその貸付金の額のうち預り金の額に相当する金額
(8) 専ら融資を受ける手段として他から受取手形を取得し、その見合いとして借入金を計上した場合のその受取手形の金額のうち借入金の額に相当する金額
(9) 同一人に対する未収地代家賃とその者から受け入れた敷金がある場合のその未収地代家賃の額のうち敷金の額に相当する金額


  支払手形は振出後転々と流通するので、個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入限度額の計算上、個別債務者の債権から直接的に相殺できないと考えられることから、実質的に債権とみられない部分の金額に含めないこととされています。
 しかし、措置法に規定する中小企業等の法定繰入率による一括評価金銭債権に係る貸倒引当金については、実質的に債権とみられない部分の金額に含めることとなりますので注意が必要です。

担保権の実行によりその取立て等の見込みがあると認められる部分の金額とは
 「担保権の実行によりその取立て等の見込みがあると認められる部分の金額」とは、質権、抵当権、所有権留保、信用保険等によって担保されている部分の金額をいうとされています。(法基通11−2−5) 
 担保不動産の評価については、鑑定評価書により正確性を確保したうえで一定の条件付きで時点修正等の弾力的な取扱いも認められています。 

第三者の振り出した手形を受け取っている場合
 法人が債務者から他の第三者の振り出した手形(債務者の振り出した手形で第三者の引き受けたものを含みます。)を受け取っている場合における当該手形の金額に相当する金額は、取立て等の見込みがあると認められる部分の金額に該当するとされています。(法基通11-2-10 )

申立ての事由に準ずるものとは
 上記3号ホの「イからニまでに掲げる事由に準ずるものとして財務省令で定める事由」とは、手形交換所(手形交換所のない地域にあっては、当該地域において手形交換業務を行う銀行団を含む。)による取引停止処分とされています。(法規25の3)
 
 この場合、法人の各事業年度終了の日までに債務者の振り出した手形が不渡りとなり、当該事業年度分に係る確定申告書の提出期限までに当該債務者について手形交換所による取引停止処分が生じた場合には、従来からの取扱いとして当該事業年度において法人税法施行令96条1項3号の貸倒引当金勘定への繰入限度額の規定を適用することができるとされています。(法基通11−2−11)

個別貸倒引当金を適用する場合の注意点
 個別貸倒引当金を適用する場合は、確定申告書に個別貸倒引当金繰入限度額の損金算入に関する明細の記載が必要とされます(法52B)。 また、法人税法施行令96条各号の事由が生じていることを証する書類や、担保権の実行等により取立て又は弁済の見込みがあると認められる部分の金額がある場合は、その金額を明らかにする書類の保存が必要となります。(法令96C、法規25の4)

新着経営情報  過去情報