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債権者の税金対策 C法令等の棚上による貸倒引当金

 


2011/11/1  菊 池 芳 平

はじめに
 法人税法では売掛金等の金銭債権については、会社更生法や民事再生法等一定の場合を除いて評価損の計上は認めていません。

 しかし、法人の経済活動に伴う貸倒れの発生は不可避であると同時に、企業会計においても貸倒引当金の計上が認められていることから、法人税法においても一定の要件のもとに貸倒引当金としてその損失の見込額を損金の額に算入することが認められています。

 法人税法の貸倒れに対する見込み計上は大きく分けると、個別の金銭債権 (個別評価金銭債権) に対する貸倒れ見込み計上と、個別金銭債権を除いた一括の金銭債権 (一括評価金銭債権) に対する貸倒れ見込み計上とに分かれます。

 前者が個別貸倒引当金、後者が一括貸倒引当金ですが、これらはいずれも繰り入れ限度額が法定されています。

 個別貸倒引当金繰入限度額について、法令は以下のとおり規定しています。

法人税法 第52条 貸倒引当金
内国法人が、更生計画認可の決定に基づいてその有する金銭債権の弁済を猶予され、又は賦払により弁済される場合その他の政令で定める場合において、その一部につき貸倒れその他これに類する事由による損失が見込まれる金銭債権(当該金銭債権に係る債務者に対する他の金銭債権がある場合には、当該他の金銭債権を含む。以下この条において「個別評価金銭債権」という。)のその損失の見込額として、各事業年度(被合併法人の適格合併に該当しない合併の日の前日の属する事業年度及び残余財産の確定(その残余財産の分配が適格現物分配に該当しないものに限る。次項において同じ。)の日の属する事業年度を除く。)において損金経理により貸倒引当金勘定に繰り入れた金額については、当該繰り入れた金額のうち、当該事業年度終了の時において当該個別評価金銭債権の取立て又は弁済の見込みがないと認められる部分の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額(第5項において「個別貸倒引当金繰入限度額」という。)に達するまでの金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

2 省略


 法人税法施行令第96条 貸倒引当金勘定への繰入限度額
法第52条第1項(貸倒引当金)に規定する政令で定める場合は、次の各号に掲げる場合とし、同項に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、当該各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。

一 法第52条第1項の内国法人が当該事業年度終了の時において有する個別評価金銭債権同項に規定する個別評価金銭債権をいい、当該内国法人との間に連結完全支配関係がある連結法人に対して有する金銭債権を除く。以下この項において同じ。)につき、当該個別評価金銭債権に係る債務者について生じた次に掲げる事由に基づいてその弁済を猶予され、又は賦払により弁済される場合当該個別評価金銭債権の額のうち当該事由が生じた日の属する事業年度終了の日の翌日から5年を経過する日までに弁済されることとなつている金額以外の金額(担保権の実行その他によりその取立て又は弁済(以下この項において「取立て等」という。)の見込みがあると認められる部分の金額を除く。)
イ 更生計画認可の決定
ロ 再生計画認可の決定
ハ 特別清算に係る協定の認可の決定
ニ イからハまでに掲げる事由に準ずるものとして財務省令で定める事由

二号 以下省略



債務者ごとに繰入限度額を計算
 個別貸倒引当金は、法人税法52条1項に規定するとおり、その金銭債権に係る債務者に対する他の金銭債権がある場合には、当該他の金銭債権を含めて繰入限度計算をします。つまり債務者ごとに繰入限度額を計算することになります。

貸倒れその他これに類する事由とは
 法52条1項に規定する「貸倒れその他これに類する事由」には、売掛金や貸付金等の金銭債権の貸倒れのほか、前渡金や保証金等について返還請求を行った場合の当該返還請求債権が回収不能となった場合もこれに含まれます。(法基通11−2−3)

個別貸倒引当金を適用する場合の注意点
  個別貸倒引当金を適用する場合は、確定申告書に個別貸倒引当金繰入限度額の損金算入に関する明細の記載が必要とされます(法52B)。 また、法人税法施行令96条各号の事由が生じていることを証する書類や、担保権の実行等により取立て又は弁済の見込みがあると認められる部分の金額がある場合は、その金額を明らかにする書類の保存が必要となります。(法令96C、法規25の4)

5年を経過する日までに弁済されることとなつている金額以外の金額について
 この他、法人税法施行令96条1項では、「当該事由が生じた日の属する事業年度終了の日の翌日から5年を経過する日までに弁済されることとなつている金額以外の金額」の規定に注意を要します。 したがって、いわゆる条件付き免除に係る金銭債権で当該事業年度で免除が確定していない債権も貸倒引当金の対象となる個別評価金銭債権に含まれるものと解します。

担保権の実行その他によりその取立て又は弁済の見込みがあると認められる部分の金額とは
 「担保権の実行その他によりその取立て又は弁済の見込みがあると認められる部分の金額」とは、質権、抵当権、所有権留保、信用保険等によって担保されている部分の金額をいうとされています。(法基通11−2−5) 
 担保不動産の評価については、鑑定評価書により正確性を確保したうえで一定の条件付きで時点修正等の弾力的な取扱いも認められています。 



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