キャッシュフローの最適化−回転率の活用−
2011/7/1 菊 池 芳 平
1.回転率とキャッシュフロー
売掛金などの受取勘定や、買掛金などの支払勘定の増減は即、キャッシュ(現金と預金の合計)に影響します。
昨日の売掛金の残高が300万円だったのに、今日100万円振り込まれると、売掛金が100万円減って普通預金が100万円増えることになります。したがって、売掛金の減少はキャッシュの増加となるわけです。
売掛金や買掛金などの残高とキャッシュの残高を常に注視し、異常な残高になっていないかモニタリングする必要があります。この場合、それらの適正な残高を把握しておく必要があります。
適正な売掛金残高や買掛金残高の金額を算定する方法の一つに回転率を使用する方法があります。
回転率は売上(仕入)が増減すると売掛金残高(買掛金残高)も比例的に増減する相関性に着目し、以下の算式で求めます。
回転率 = 年間の売上金額(仕入金額) ÷ 売掛金残高(買掛金残高)
(注)売掛金や買掛金の他に受取手形や支払手形、未払い費用、未払い金などについても同様です。
過去の推移や標準値などを参考にして求めた自社の売掛金や買掛金の標準回転率により、その期の標準回転率準拠の売掛金残高や買掛金残高を求めることができます。
この標準回転率準拠の売掛金残高(買掛金残高)と比較したその期の売掛金残高(買掛金残高)の増減金額により、キャッシュフロー(注)の増減を計算し、キャッシュフローの改善に役立てるというわけです。
(注) キャッシュフローは、一定期間のお金の流出入とか、お金の収支、あるいはお金の流入と流出の差額といった意味で使われます。
たとえば、その期の売上から回転率で逆算して求めたあるべき売掛金残高より実際残高が多い場合はその多い金額だけ回収が遅れ、キャッシュが減少している状態と考えられるので、その原因を分析して改善します。
これと裏返しに仕入から回転率で逆算して求めたあるべき買掛金残高よりも実際残高が少ない場合は、払いすぎの原因などによるキャッシュの減少の懸念もあるので分析し改善します。
ただし、この方法はあくまで一般的な考えですから、検討に当たっては、個別企業の月別・期別・取引先別又は外部環境などの特殊性を判断に入れる必要があります。
2.利益とキャッシュの関係
損益計算書の売上には売上代金の未回収分も含んでいますし、同様に仕入などの諸費用には代金の未払い分も含んでいますから、これらの差額としての当期利益には代金の未回収分と未払い分を含んでいることになります。
なぜなら損益計算書では売上は商品やサービスが引き渡されると代金を受領しなくても売上として収益計上され、仕入などの諸費用は代金を支払わなくても請求書が届いた時点で費用計上されるからです。
このことを会計学では発生主義といっています。つまり利益はキャッシュによる決済時ではなく、それより前段階の納品請求時に計上する仕組みになっているのです。
従ってほとんどの場合利益とキャッシュは一致しません。
この損益計算書の売上代金の未回収分と諸費用代金の未払い分を含んで計算された当期利益から、誘導的に未回収分と未払い分を控除するなどして純粋のキャッシュに還元するための調整計算がいわゆるキャッシュフロー計算書と言えます。
代金の未回収や未払いを利益に加減しないと、正確なキャッシュが計算できないわけです。
3.キャッシュフローの最適化
けれどもこのキャッシュフロー計算書では必ずしも正確な経営情報が得られるとは限りません。
なぜかというと、キャッシュフロー計算書は売掛金や買掛金の期首と期末の残高の増減からキャッシュの増減を計算するアプローチをとっており、比較対象が期首残高であり、その企業の適正な残高との比較による計算ではないからです。
過去の推移や標準値などを参考にして求めたあるべき売掛金や買掛金あるいは在庫その他の資産・負債項目の適正残高のバランスや、経常収支比率 すなわち キャッシュインとキャッシュアウトのバランスの改善調整を図ることにより、キャッシュフローの最適化を意図することは、経営の必須業務と言えます。
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