いかにして好業績を確保するか
- 価値連鎖、調整、最適化 -
2010/10/1 菊 池 芳 平
はじめに
会社の中にはいろいろな仕事があります。無数といってもよいくらいですが、これらの仕事がうまく機能しているかというと必ずしもそうではありません。
会社の中の仕事だけでなく、取引先や顧客との取引もそうですが、会社が競争において優位を維持するにはこれらの仕事の相互関係にも目を向ける必要があります。
会社の諸活動の相互関係を体系的に検討し、価値連鎖という概念で競争優位を分析しようとしたのがM.E ポーターですがその提案は示唆に富み、私たちの経営活動に活用できます。
彼はその著、競争優位の戦略の中で、価値とは、買い手が会社の提供するものに進んで払ってくれる金額であるとし、その価値は価格と売れる量の積である総収入金額であると説明しています。
価値連鎖という概念はなかなかわかりにくい部分もあります。価値という言葉を仕事とか業務に置き換えてみるとなんとなく分かるような気がします。私たちの仕事が無駄なく効率的、効果的に全体最適のために機能している状態を価値連鎖が最適の状態と言えると思います。
私たちの仕事すなわち価値は変転きわまりない環境に適応するため常に最適化に向かって調整を続ける必要があります。
それでは価値連鎖、調整、最適化の一端をご紹介しましょう。
事例1
A社は食料品を扱う小売業ですが、経営者は売上を少しでも多くするために、在庫を切らさないように欠品のないように注意をはらっています。しかし売上は多いのですが利益がでません。
一方、同業のB社は効率と効果を重視しています。売れ筋で粗利益率の良い商品情報の収集に余念がありません。その結果利益が出てきたので給与を上げようと検討しています。
ポイントはB社の仕入れにあります。B社の仕入れは粗利益率の向上と廃棄ロスの削減という課題のために常に仮説、検証といった調整が積極的に行われ、その結果、粗利益率と不良品率はA社よりもそれぞれ1%改善されています。これは年商3億円の場合、3億円×2%で約600万円の利益の相違となります。
仕入れの最適化→粗利益率UP→不良品率低下→利益UP→給与UPという価値連鎖の調整・最適化はB社が優れていると言えます。
事例2
仕事の連結関係、すなわち価値連鎖は会社の内部だけにとどまりません。広く供給業者と会社さらに買い手をも巻き込んだ価値システムとして、最適化が図られる必要があります。
こんどはビールメーカーと供給業者との提携による価値システム最適化の事例です。
ビールはご存じのとおり、その容器のほとんどがアルミ缶ですが、提携内容はそのアルミ缶の製缶大手3社がキリンホールディングスの工場にビール缶を納品した後、帰り荷として製品のビールを載せて別のキリンビール工場に運ぶというものです。
この提携が実際に運用されると、キリンと缶メーカーとの取引業者間の価値連鎖の最適化が一層進展することでしょう。
具体的にはCO2排出量の削減とともに、キリンは工場間配送のための自前トラックの過半数が減ることでコスト削減が可能になります。一方缶メーカーは帰り荷の配送受託料の収入で収益向上となります。(参考資料:2010/8/21日本経済新聞夕刊)
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