お金の流れが簡単に分かる方法
(キャッシュフローよもやま話)
2010/9/1 菊 池 芳 平
1.はじめに
ある日、男は給料も出たので旅に出かけたのですが、旅先でいっぱいモノを買ったので、旅から帰ってお金を数えました。すると随分お金が無くなっていることに気づきました。
手元にキャッシュがなくなるとどうするかといいますと、当たり前のことですが、今まで以上に収入の増加を図る、支出を抑える、売れるモノを売却してお金に変える、足りないお金を他者から借りる、といった行動に出ると思います。
お金を借りる場合は、金融機関等の貸し主は貸したお金が返せるか慎重に審査しますが、場合によっては借り主のこちらが大変困っていても(雨が降っても)、貸さない(傘を貸さない。傘ない)こともあります。
経営の世界ではもっと複雑になります。
市場環境の急激な変化や設備・不動産の購入、あるいは競争の激化その他いろいろな理由により利益がでなかったり、利益はでてもキャッシュフロー(お金)に変動が生じると、売掛金や在庫や不動産等の資産が相対的に過大になり借金も増えてきます。
借金が増えてくると、借金の返済でキャッシュの流出が多くなり、やがて資金繰りが苦しくなるという資金連鎖を招いてくるのです。
会社に利益(儲け)は必要ですがそれ以上に大事なことは、現実にお金(キャッシュ)が増えるような経営の舵取りを行うことです。このことは分かっていることですがなかなか思うようにいきません。しかし資金繰りが苦しくてお金のことをいつも心配しているようでは安心していい仕事が出来ません。
お金の源泉は利益ですが、お金(キャッシュフロー)と利益(儲け)とは内容が異なるために基本的には別々に計算します。この他に利益からお金を誘導的に計算する方法があります。
2.最低、知っておきたいこと
@ お金の計算その1 「収支アプローチによるキャッシュフロー」
この方法はお金の計算を儲けの計算と別に行う方法です。
毎月の入金(売上の代金回収)と出金(支払金額)の合計を見積もった一覧表を作成し、入金が出金より多くなるように管理する方法です(通常これを資金繰りといい、資金繰り表で管理します)。
基本的には売上の代金回収の入金合計が、支払金額の出金合計より多くなくてはいけないわけですが、構造的にそうならない場合は経営改善が必要です。
この収支不足を金融機関の借入でやりくりする場合は、実現可能な借入返済計画をたてることが前提です。このへんの詰めが甘いとあとで大変困ることになります。
A お金の計算その2 「利益アプローチによるキャッシュフロー」
利益とお金の関係を知って経営に活かす簡易な方法としてEBITDA(イービットディーエーと読みます)があります。
EBITDAはEarnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortizationの略で、営業利益に減価償却費を加えて計算します。 通常この金額は借入返済額以上であることを要します。
EBITDA(営業利益+減価償却費)>借入返済額
EBITDAの変形として、EBITDA−支払利息>借入返済額 として使用することもあります。
EBITDAの計算において営業利益を使用するのは、臨時突発的な特別損益や支払配当、支払利息等の資金調達形態の影響を計算から排除し、純粋に営業のみのキャッシュマージンの創出力をみようとするものですが、実態に即して税引前当期純利益、あるいは経常利益等を使用しても良いと思います。
3.次に知っておきたいこと
EBITDAは計算が簡単なので実務でよく使われるのですが、キャッシュフローの計算としては正確性に欠ける場合があります。
売掛金や受取手形、在庫、買掛金、未払金等といった運転資金に変動があるとか、法人税等や設備投資が生じる企業には以下の方法が適します。
フリーキャッシュフロー(EBITDA−法人税等±運転資金増減−設備投資)>借入返済額
(注) 運転資金=売掛債権+棚卸資産−仕入債務
このようにしてキャッシュフローが計算できると、金融機関からの借入金である有利子負債とキャッシュフローの比率(有利子負債キャッシュフロー比率)が分かります。
この比率は企業再生の準則等によると10倍以下であることが求められています。(中小企業再生支援協議会事業実施基本要領・我が国の産業活力の再生及び産業活動の革新に関する基本的な指針・株式会社企業再生支援機構支援基準)
有利子負債が過大である場合は、その縮減対策や債務者査定区分の上方遷移(金融機関評価のランクアップ)へと経営改善計画をすすめることができます。
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