彼と彼女のポジショニング
2010/8/1 菊 池 芳 平
恋愛物語に「私はあなたの何なの?」といった言葉が出てきます。
この言葉が破局に向かっているときに使われるかどうかはともかくとして、この言葉が使われることで彼または彼女の位置関係に気付き、恋が実ったこともあるようです。
昔から恋は歌にうたわれ、映画のテーマになり、小説の主題になって今日に至っているだけに、恋は人類とともに歩んできたといっても過言ではないでしょう。
話を経営に戻しますと、経営の世界にも同じようなストーリーが展開しそうです。
「私はあなたの何なの? ・・・・・・・」
恋の相手はお客様ですがこの お客様、えてしてわがままです。
が、貴重な情報源でもあります。
お客様の環境情報の入手、お客様の分析、どのお客様に気に入られたいか、ライバルと自社との明確な差別性の創出、お客様の獲得活動等々。
こういった流れのなかで企業活動は展開しますが、はたして企業はお客様の心を射止めているのでしょうか?
【事例】
Aさんは中年の女性。
いろいろな事情から40歳前後に離婚した後、ある町でスナック経営を始めました。バブルの頃はずいぶん繁盛したようです。
それも下火になり、おでんやさんを始めました。
しかし立地が悪いうえに店舗イメージもよくなかったので客足はまばらで採算ベースにのりません。
2〜3年でその店を引き払い隣町でまたスナック経営を始めたのです。
最初は繁盛していましたが、高い家賃等の固定支出で割に合わないものと見えて、その店も2〜3年で引き払いました。
感心なのはこれからです。
商売にたいする飽くなき執念とでも申しましょうか、やがてとある駅の近辺に小さな店舗を見つけ、和風の改装を施し、おでんを主体にした和風料理のお店をオープンしたのです。
これがこの近辺の会社員や住民の客層にマッチしてお店は大繁盛となったのです。
お店の面積がカウンター席だけの手狭な感じですが、古民家風の内装と和風女将のイメージがみごとにマッチしてお客様が絶えない状態です。
人々が渇望している”癒しという価値”がここにはあるのです。
変な商売気はみせず、時々田舎言葉で語りながら、これまで経営してきたお店の経験を糧に、上手に”田舎風の癒しの空間”を演出しているのです。このあたりに顧客を飽きさせない魅力があるようです。
この事例は、マニュアル化された大手飲食店には真似のできない、ハードとソフトがみごとに調和したポジショニングの成功例といえます。
あわただしく生きる都会人。
大都会に失われつつある、癒しと安らぎ。
「私はあなたの何なの?」
このお店のお客様の脳裏にはその答えがしっかりと刻まれているようです。
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