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M&A、売り手と買い手の重要ポイント
2010/1/5 菊 池 芳 平
1.はじめに
M&A(Merger and Acquisition)は合併、会社分割、事業譲渡、株式交換、株式移転等を含む広い概念として用いられています。M&Aは企業の合従連衡であるといえるでしょう。
会社はいろいろな事情から経営の過程で事業を売却したり、買収したりする必要が出てきます。
売り手の側では事業再構築、後継者難、事業再生、オーナー経営者の引退等。
買い手の側では、成長戦略からくる事業強化拡大、競争の優位性を高める、等が原因と思われます。
国際間の企業競争が激化していることから、最近は特に新聞紙上でM&Aの記事を見かけることが多くなりました。
2.マーケット
日本企業による日本企業買収(IN-IN)・日本企業による海外企業買収(IN-OUT)・外資系企業による日本企業買収(OUT-IN)の年別件数の推移は以下のとおりです。(出典:株式会社レコフデータ)
プレジデントロイターは日本企業がかかわった2009年1─12月期の合併・買収(M&A)は金額ベースで、前年同期比で20.6%減少。件数は、同7.3%の減少と発表しています。(2009/12/25)
景気後退の影響を受けてM&Aは縮小の傾向に見えますが、長期的にみると市場は拡大傾向にあると思われます。
なお小規模のM&Aは継続的に発生しているとみられ、特に小型のMBO(経営陣の自社買収)は中小企業の事業承継の手法として定着しつつあり、取引件数も増加の傾向にあるようです。
3.M&Aのプロセス
M&Aの一般的なプロセスは以下のとおりです。
- ビジョン・戦略との整合性の検証
- 事業計画の検証または策定・M&A計画の策定
- アドバイザーの選定、M&A仲介機関の選定
- 売買先候補の探索と選定・交渉
- 秘密保持契約の締結
- 基本合意
- デューディリジェンス(詳細調査)
- 交渉
- 売買契約締結
- クロージング(受け渡し)
- 統合(PMI)
4.買い手サイドのM&A
買収側の企業の場合、重要なポイントとして
第一点は、M&A以外に選択肢がないか十分に検討すること。
第二点は買収先企業の詳細調査。(簿外債務や架空資産、その他のリスク要因の発見)
第三点は、買収価格の決定。(高値づかみをしないこと)
第四点は、統合のマネジメント(PMI、Post Merger Integration)です。
買収は規模の経済性(水平的統合)や業務の補完性、補強性(素直的統合)を追求しますが、買収の失敗の多くはその相乗効果(シナジー)が必ずしも1+1=2以上になっていないことです。
逆に買収後に借金と利息の返済だけが残ったと言う場合もあるだけにハイリスクです。
最も重視すべきは統合による効果実現の詰めを甘くしないことです。
シナジー効果の分析は買収の意志決定の前によく検証すべきですが、実はDAY1(統合後の業務開始日)から、シナジー効果の最大化を目指して、効果の測定や評価及び効率性、効果性の追求という本当の勝負が始まるのです。
5.売り手サイドのM&A
事業の売り手で重要なポイントは
第一点はM&A計画の情報漏洩の最大注意。
第二点は自社の企業価値の向上です。
事業の売却は従業員や得意先等のステークホルダーにとって特にデリケートな情報ですから外部に漏れないようファックスやメール、電話、交渉や会話等の過程すべてに情報の遺漏なきよう最大の注意を払うことが大切です。
またM&A交渉までに売却を有利に進めるため(つまり高く売るために)会社内部の問題点を洗い出し、企業価値向上のための対策を実行する必要があります。
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